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【医学部小論文】よくある6つの誤解と正しい書き方|最初に知っておくべき基本とは?

医学部入試における小論文は、単なる作文や国語の延長ではありません。「何を書けばいいのか分からない」「理系だから苦手に感じる」といった声はとても多く聞かれますが、そうしたつまずきの背景には、医学部小論文にまつわる“誤解”が潜んでいることも少なくありません。

本記事では、小論文対策を始める前に知っておきたい「よくある6つの誤解」を解きほぐしながら、医学部小論文ならではの視点・書き方・準備法をわかりやすくご紹介します。

文章力に自信がない方や、まだ具体的な対策に踏み出せていない方にこそ読んでいただきたい内容です。ぜひ最後までご覧ください。

この記事で分かること
  • 小論文対策でつまずきがちな「誤解」とその背景
  • 医学部小論文が“普通の作文”と何が違うのか
  • 誤解を正したうえで、どんな対策が有効なのか
こんな人におすすめ
  • 小論文の書き方がわからず不安な医学部志望の方
  • 作文や現代文は得意だが小論文が苦手な方
  • 医学部受験に必要な小論文対策の全体像を知りたい方
【執筆・監修】 医学部受験の専門家 
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

▼目次

「正しい対策」を阻む“思い込み”とは?

医学部小論文の対策を始めると、最初につまずきやすいのが「こうすればいいんでしょ?」という思い込みです。
例えば、「作文の延長として書けばOK」「国語の成績が良ければ何とかなる」など、一見もっともらしい認識の中に、合格から遠ざける落とし穴が隠れていることがあります。

こうした誤解があると、せっかく努力しても方向性がずれたままになりがちです。

では、どんな“思い込み”が小論文対策の方向性を誤らせてしまうのでしょうか。
ここからは、代表的な6つの誤解を取り上げながら、本当に必要な視点と準備法について解説していきます。

第1章|医学部小論文は「国語」ではない

医学部の小論文対策において、最もよくある誤解のひとつが、「小論文は国語の延長線にあるもの」という認識です。
たしかに文章を書く試験ではありますが、医学部小論文の本質は「教養型の医療論述」であり、国語のテストとは目的も評価基準もまったく異なります。

国語の延長と捉えると、なぜ失敗するのか?

高校までの国語教育では、文学的文章や評論文の読解が中心であり、「論理的に考えを書く」訓練は限定的です。
一方、医学部の小論文では、医療や社会問題に対して自分の考えを論理的かつ倫理的に展開する力が求められます。

具体的な出題テーマの例

  • 「高齢化が進む社会における医療の役割とは何か」
  • 「安楽死は認められるべきか」
  • 「AI診断の普及は医師の仕事をどう変えるか」


これらは単なる意見文ではなく、医療現場や社会背景に対する教養・理解・立場の明確さが評価されます。

医学部小論文で求められる視点

医学部の小論文では、「専門的知識に裏づけられた論理的な意見表明」が必要です。
文章力よりも、医師としての資質を感じさせる視点やバランス感覚の方がはるかに重要とされます。

そのため、国語の得点が高いからといって小論文も得意とは限らず、逆に理系的な思考や倫理的な感受性がある人の方が好評価を得やすいこともあります。

対策:生命倫理・医療制度の時事的理解をどう身につけるか

小論文で評価されるのは「医療について何を知っているか」ではなく、「知っていることをどう捉え、どう考えるか」です。
そのためには、医学・社会問題・生命倫理に関する基礎的な理解が欠かせません。

日常的にできる医療リテラシーの高め方

  • 高校の「公共」「生物」「倫理」などの教科書に出てくる医療・生命に関するテーマを読み直す
  • NHK医療健康サイト厚生労働省の広報資料で、最新の社会課題に触れる
  • 医療に関するドキュメンタリー新聞の特集を“背景理解”のヒントとして活用する

このように、「医療に関心がある自分」「医師を目指している自分」として、どう考えるかを常に意識することが、小論文において大きなアドバンテージになります。

次章では、「理系だから苦手」と思い込んでいる人にこそ知っておいてほしい、「論理力」の本質について解説します。

第2章|論理力はすでに持っている——理系=苦手の誤解を解く

「自分は理系だから小論文は苦手…」そう思っていませんか? それは誤解です。
実は小論文の要である“論理的思考力”は、数学や物理に親しんでいる理系の人こそ日常的に使っている力なのです。

なぜ理系こそ小論文に強いのか

小論文とは、「問いに対して、理由を示しながら自分の立場を述べる」文章です。
この構造は、まさに理系科目の“仮説→検証→結論”のプロセスと一致しています。

理系的な論理性の例

  • 「このデータから○○が推測できる」
  • 「この事象は△△という背景があるため成立する」
  • 「この2つを比較すると、○○の方がより望ましい」


こうした構造は、そのまま小論文の展開力に直結します。

対策:理系的構造を小論文に応用するには?

①「問い」を明確にする
まずは与えられたテーマの背景や論点を整理し、何について問われているかを構造的に把握しましょう。
②「立場」と「根拠」をセットで書く練習
理系の答案と同じく、「私はこう思う → なぜなら…」という主張と理由をセットで表現する癖をつけることが重要です。
③「比較」「因果」「反論→再主張」などの構成パターンに慣れる
数学の証明や実験レポートで使うような筋道のある展開方法を、小論文でも活用しましょう。

このように、小論文の論理的構成は、理系のトレーニングで自然と培われている力です。苦手意識を持たず、むしろ得意分野として活かしていきましょう。

次章では、「小論文には正解が無いから、何を書いてもいい」は本当か?という、ありがちな誤解を扱います。

第3章|「答えが無い」は「なんでもアリ」じゃない

「小論文には正解が無い」──これはよく聞く言葉ですが、そのまま「好きに書いていい」「なんでも自由に主張してよい」と解釈してしまうのは危険です。

実際の小論文評価では、「自由な発想」よりも「論理的で一貫した展開」が重視されます。
つまり、小論文には“正解”はなくても、“評価される型”や“筋道の通った構成”という「正解に近づくパターン」は存在します。

評価される小論文に共通するポイント

①「問題提起」→「自分の立場」→「理由・具体例」→「結論」
この一貫した構成を意識することで、読者(採点者)にとってわかりやすく、評価されやすくなります。
②問いに即しているか
設問の趣旨から逸れていないかどうか。話題を広げすぎたり、主観だけで書いたりしないよう注意が必要です。
③バランス感覚
一方の意見だけを押し通すのではなく、反対意見に触れたうえで再主張を行うなどの視点も重要です。

対策:型を身につける練習法

まずは「型どおり」に書けることが、自由に表現することよりも優先されます。
その上で必要に応じて少しずつオリジナリティを加えていくとで、読みやすさと説得力のある答案を作成することができます。

いきなり書くのが難しい場合は、構成メモやマインドマップで論点整理をしてから書く練習をすると良いでしょう。
例えば、次のような流れで構成メモを作成してみましょう。

  • テーマ文を読んで、「何について問われているのか」を一言で要約
  • 賛成 or 反対など自分の立場を明確に決定
  • その立場に対する理由を2〜3個箇条書きで挙げる
  • 理由ごとに具体例やデータ、反対意見への言及を書き出す

マインドマップを使う場合は、中央にテーマを置き、枝分かれで「立場」「根拠」「反論」などを整理すると、視覚的に構成を明確にすることができます

また、模範解答の丸写しではなく「構造を真似する」意識を持つことも大切です。
例えば、模範解答を一度読んでから、構成要素(主張・根拠・具体例など)を書き出し、それをもとに自分の言葉で再構成する練習をすると、型が自然と身につきます。

さらに実践的な方法として、複数のテーマに対して「型に沿った構成メモ」を書き溜めていくこともおすすめです。

一つのテーマにつき5〜10分で要点だけ書き出す「構成メモ演習」を繰り返すことで、どんな問いにも一定の型で対応できる力が養われます。

型の習得は自由な表現の土台です。基礎的な構成を身につけることが、合格答案への第一歩となります。

次章では、こうした「書き方」以前の前提となる、「小論文で使える知識の集め方」について解説します。

どこから手をつければよいか迷ったら?
MEDICAL DIGでは、受験生一人ひとりのレベルに合わせて伴走しています。
「まずはどんなサポートがあるのか聞いてみたい…」という方は、お気軽に無料の個別相談をご利用ください。

第4章|知識は「量」よりも「使い方」が大切

小論文対策と聞くと、「医療や社会の知識をたくさん覚えなければならない」と感じるかもしれません。
しかし、実際に必要なのは膨大な知識量ではなく、限られた知識を論理的に使いこなす力です。

たくさん知っている=高得点、ではない

小論文では、「知識の多さ」そのものよりも、その知識をどう使って、問いに答えているかが評価されます。

例:同じテーマに対する答案の差

  • Aさん:医療制度の歴史や制度の変遷を詳述→テーマからズレた内容に
  • Bさん:「地域医療が不足している」という知識をもとに、自身の立場を明確に主張→高評価

この違いは、「知識そのものの量」ではなく、「問いに答えるために知識を使っているか」にあります。
Aさんは知識が豊富でも、それを問いに結びつけられなければ評価されません。一方、Bさんのように知識が限られていても、適切な使い方ができれば高得点につながるのです。

知識を“面”でとらえるべし

知識を点で覚えているだけでは、いざというときに使えません。
テーマごとに関連づけて整理し、「線」や「面」としてとらえることで、記憶の定着と活用力が高まります。

たとえば「医師の働き方改革」というテーマなら、労働・倫理・医療制度など多面的な観点から知識をつなげることが重要です。
ストーリーのある理解を意識することで、「なぜ改革が必要なのか」「誰にどんな影響があるのか」といった因果や対立構造を自然に想起できるようになります。

おすすめの学習法:知識を「使う」視点で身につける

ここでは、知識を「点」ではなく「面」として捉え、小論文に使える形に変えるための具体的な学習法を紹介します。

知識を活用する学習法

  • 新聞・記事を読んだ後に「要点+立場」を1行メモする
    読んで終わりにせず、自分の考えを言語化する習慣を持つと、記憶と論理の定着に効果的です。
  • 医療テーマごとにマインドマップを描く
    中心にテーマを置き、周囲に関連する知識や視点(制度・倫理・患者側の声など)を書き出します。
  • 同じテーマで異なる立場をシミュレーションしてみる
    賛成・反対どちらの立場でも書けるように準備することで、柔軟な思考力が身につきます。

実際のワーク:「知識を使って構成を立てる」

ここからは、実際に小論文で問われやすいテーマを想定し、持っている知識を使って構成を立てる練習をしてみましょう。

演習テーマ:医師の働き方改革は必要か?

使える知識
長時間労働、当直制度、医療ミス、チーム医療、医療安全
構成例
  • 立場:改革は必要
  • 理由1:長時間勤務は医師の健康を損ない、医療の質を下げる
  • 理由2:チーム医療の促進やIT化で補完が可能
  • 留意点:制度改革には人員確保・財源の課題も

このように、知識をただ覚えるだけではなく、「自分の言葉で使える」形に変える練習が、小論文では大切です。
テーマを見たときに、すぐに構成メモを作れるかが実力の分かれ目になります。

次章では、設問の読み解き方=問いの分析力について解説します。

第5章|面接と小論文は「表裏一体」

医学部の入試では、小論文と面接が別々に実施されることが一般的です。
しかし、この2つは決して独立した存在ではなく、むしろ“表裏一体”の関係にあります。

文章で答えるか、口頭で答えるかの違い

小論文では「終末期医療における患者の尊厳とは」、面接では「あなたは尊厳死をどう考えますか?」といったように、同じテーマが形式を変えて問われることがあります。
つまり、問われている“本質”は共通しており、その表現手段が異なるだけなのです。

効率のよい対策:片方の対策がもう片方にも活きる

小論文を書きながら「面接でどう答えようかな?」と考える、面接練習をしながら「小論文ではどう書くか?」を考える——。
このように、両者を“別物”とせずに意識的につなげて練習することで、効率のよい対策が可能になります。

トレーニングのコツ

ここでは、小論文と面接の力を同時に伸ばす具体的なトレーニング法をご紹介します。

小論文×面接の連動トレーニング例

  • 面接練習の内容を小論文に書いてみる
    口頭で話した内容を文章に落とし込む練習。考えの構造化・言語化の精度を高められます。
  • 小論文の構成メモをもとに、即興スピーチ
    話す前に頭の中で組み立てる習慣がつき、論理力と表現力が同時に鍛えられます。
  • 志望動機を「一問一答」形式で多角的に整理
    価値観や志望理由に一貫性があるかを確認しながら、表現の幅を広げましょう。

面接で問われる「小論文の中身」

医学部では、小論文で書いた内容をもとに面接が進むケースも珍しくありません。
「この小論文で書いたことは、あなた自身の考えですか?」といった質問に対し、自分の言葉で答えられる準備が必要です。
あらかじめ、小論文の構成メモや主張の根拠を整理しておくと、面接の受け答えにも一貫性が出てきます。

一貫性を確認するためのセルフチェック

小論文と面接で矛盾したことを言ってしまわないよう、「志望理由」「医師像」「問題意識」について、事前にまとめておくことが大切です。
「面接官だったら自分に何を聞くか?」という視点で、小論文の内容を読み返す習慣をつけるとよいでしょう。

書く⇄話す の往復によって、思考が磨かれていく
そのサイクルこそが、医学部入試の小論文・面接対策において最も効果的なアプローチです。

次章では、小論文の力が入学後どのように活きていくかについて見ていきます。

第6章|「合格のための小論文」から「医療者としての思考」へ

ここまでの章では、小論文を書く力をどう身につけるか、その具体的な方法や注意点を見てきました。
では、その「小論文力」は、医学部に入ってから、あるいは医師になってからどのように活きるのでしょうか?

その言葉は、だれに届くのか

これまでの学校生活では、ご自身と同世代の友人や知人、あるいは自分の考えをわかってくれる先生など、同じような価値観を持つ人たちとのやりとりが中心だったかもしれません。
でも、医療の現場はまったく違います。

たとえば、「がんの告知を受けたばかりの患者さん」「耳が遠くなった高齢の方」「夜勤明けで疲れ切った看護師さん」
学生時代とは違って、自分とは違う価値観や考え方を持った方や、知識量や思考力まで様々な人たちとコミュニケーションを取る必要があります。
医師として働くためには、どんな人に対しても、自分の考えを正確に、分かりやすく、誠実に伝える力が求められます。

「書く力・話す力」は、患者と向き合う力

医師が日々向き合うのは、病気や検査結果だけではありません。

「この薬の副作用はどうなんですか?」「手術は本当に必要ですか?」という問いに、どう答えるか。
「あとどれくらい生きられるのでしょうか?」という重たい言葉を、どう受け止め、どう返すか。

そのとき必要なのは、小論文で養われた“構造的に考える力”や“自分の言葉で伝える力”です。
論理と感情、専門性と共感—— それらをバランスよく扱える人こそが、信頼される医師になれるのだと思います。

医療現場で問われる「伝える力」

  • 専門知識をかみ砕いてわかりやすく伝える力
  • 相手の立場に寄り添い、言葉を選ぶ力
  • 誤解を招かず、根拠を持って説明する力

「型」で終わらせず、「人と向き合う力」に

受験対策としての小論文は、どうしても“型”や“正解”に目が向きがちです。
でも本来、「書く」ことも「話す」ことも、人と深く関わるための力です。

「合格のためにやる小論文」ではなく、「人の命や人生に向き合う訓練」として捉えてほしい。
それが、医師を目指すみなさんにとって、本当の意味での準備になると私たちは考えています。

次章では、ここまでの内容を総まとめし、今日から始められる具体的な対策のステップをもう一度整理していきます。

第7章|小論文対策の総まとめ:誤解を解き、正しく備える

これまで、小論文にまつわる誤解や本質的な学び方について見てきました。
最後にもう一度、「どこを誤解しやすいか」「どう対策を始めればよいか」を整理して、明日からの学習につなげていきましょう。

【誤解①】小論文は「国語の延長」
→ 小論文で問われているのは、論理的な思考と構成力。感性や文才ではありません。

【誤解②】知識があれば書ける
→ 評価されるのは「知識の使い方」です。用語の羅列ではなく、その場の文脈に応じた応用力が重要です。

【誤解③】とにかく書けば伸びる
→ 大事なのは「考えの設計」。構成を意識しないまま書き続けても、成長にはつながりません。

医学部の小論文は、単なる作文ではありません。

「問いを正しく読み取り」「根拠を持って主張し」「他者に伝わる形でまとめる」—— それらの力が、将来の医療者としての素養につながるからこそ、各大学で重視されているのです。

論理と思いやり構成と誠実さ
小論文とは、まさに「考え方の訓練」そのものなのです。

今日からできる3つのステップ

では、これから何をすればよいのか。
小論文の力を効果的に高めるために、今すぐ取り組める3つのアプローチをまとめました。

小論文対策:今日からできる3つのステップ

  • よく出るテーマを見て、自分の立場や考えを整理しておく
    自分の価値観やスタンスを明確にしておくことで、未知の設問にも落ち着いて対応できるようになります。
  • 「主張→理由→具体例」の構成メモを日常的に作ってみる
    文章化せずとも、日頃のニュースや体験に対してこの形で考えるだけで、論理的思考の訓練になります。
  • 面接やスピーチ練習と組み合わせて、“自分の言葉”で語る力を高める
    書く力と話す力はつながっています。相互に練習することで、思考の精度と表現力が高まります。

医学部入試の小論文対策は、「医師になる準備」の一部です。
形式にとらわれず、「どんな場面で、どんな相手に、どう伝えるか」を常に意識することが、試験対策にも、その先の実践にもつながっていきます。

考える力、伝える力を磨く旅は、すでに始まっています。
どんなテーマに出会っても、自分の言葉で向き合えるよう、日々の学びを積み重ねていきましょう。

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