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筑波大学医学類・帰国子女枠に合格!IB生が挑んだ小論文と面接の実例解説

IB生が筑波大学医学類を受験

この記事でわかること

  • IB生が苦戦しやすい小論文・面接の課題と具体的な対策方法
  • 帰国子女ならではの経験を医学部受験に活かす方法
  • 受験生本人が「自分の弱点」に気付くことの重要性

帰国子女枠×医学部の出願や対策に不安がある方へ
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「英語でのエッセイやディスカッションなら得意なのに、日本語の志望理由書になると、何を書けばいいかわからない」

そう話してくれたのは、アメリカのIB校に通う高校3年生の帰国子女のAさんでした。TOEFLもSATも高得点、活動歴も申し分ない。にもかかわらず、自分の経験と志望動機をどう結び付けて良いのかが分からず悩んでいらっしゃいました。

帰国子女枠というニッチな制度、医学部という競争の激しい進路、そして小論文と面接という“伝える力”を問われる試験形式——。

情報が少なく、塾も予備校も頼れない。そんな状況で彼女と出会ったのは、出願の約5か月前でした。

この記事では、そんな彼女がどのように自分の考えを整理し、伝える力を磨いていったのか、小論文や面接対策の指導事例をもとにご紹介します。

「海外経験はあるけど、それをどう活かせばいいかわからない」「一般入試ではなく、帰国子女枠で医学部を狙いたい」——そんな悩みを持つ方の参考になれば幸いです。

この記事はこんな方におすすめ

  • IB出身で日本の医学部を志望している帰国生
  • 小論文や面接で「伝え方」に悩んでいる受験生
  • 一般的な塾や予備校では対応が難しいと感じている保護者さま

執筆・監修】 医学部受験の専門家 妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

▼目次

背景:IBで優秀な成績をおさめながらも、日本の医学部受験に不安を抱えていた理由

TOEFL110点、SAT1400点台。さらに模擬国連や医療系NPO、高齢者施設でのボランティア経験もある——そんな“実績十分”なIB生のAさんが、帰国子女枠で筑波大学医学類を目指した事例です。

私たちのもとに相談をいただいたのは、受験の約5か月前。Aさんは、英語でのエッセイやプレゼンには自信があるものの、日本語で「志望理由書」を書こうとした途端に何を書けば良いか分からなくなってしまうという状態に陥っていました。

「グローバルに活躍したい」「多様性の大切さを実感した」といった抽象的な表現は出てくるものの、筑波大学でなければならない理由や日本で医学を学びたい根拠にはなかなかたどり着かない——そんな難しさをAさん自身も実感しておられました。

TOEFL・SATは高得点。それでも日本の入試で活かせなかった理由

帰国子女枠という制度の特性上、出願者は一定の語学力や学業成績を備えていることが前提です。その中で合否を分けるのが、志望理由書や小論文、そして面接といった“伝える力”の部分です。

しかし、IBで培ってきた論述スタイルは、英語圏の価値観や構成に基づくもの。出発点が「自分の考え」であるIB的なエッセイと、「社会通念や相手の共通理解に合わせて意見を構造化する」という日本の入試問題では、根本的な発想の順序が異なります。

実際、Aさんが最初に書いていた志望理由書では、「グローバルな医師になりたい」といった抽象的な理想像ばかりが並び、なぜ日本で、なぜ筑波大で学びたいのかが伝わってこない状態でした。

志望理由書と小論文で直面した“日本的な表現構造”の壁

小論文でも同様のギャップが見られました。問いに対して自分の意見を述べることはできるものの、その意見の背景にある社会的文脈や相手の立場を意識する力が弱く、論旨がずれてしまう場面が目立ちました。

例えば「医療におけるQOLの重要性」といったテーマに対しても、自分の経験談や印象論に終始してしまい、「社会の中でその意見がどう位置づけられるか」を示すことが難しいようでした。

帰国子女生にありがちな「情報量はあるが、論理の骨組みが弱い」状態。本人もその自覚はありながら、何をどう変えれば良いかが分からず困っておられました。

「多様な経験」は武器にもなり、足かせにもなる

さらに難しかったのが、「海外経験=強み」という前提から抜け出すことでした。模擬国連やNPO活動など、確かに他の受験生にはない経験を重ねてきたAさんですが、それを語ることで満足してしまい、「相手にとってどう伝わるか」という視点が希薄になっていました。

実績は豊富で、話題も多い。だからこそ、「語れば伝わる」という考え方から抜けられず、情報の取捨選択や問いへの的確な応答に苦戦していました。

こうした状態をAさん本人もなんとなくは自覚されていて、「言いたいことはたくさん思いつくけれど、上手にまとめられない」と面接練習で口にされていたことも印象的でした。

まさに、帰国子女の受験生によくある“経験を武器に変えるための構造化力の弱さ”が課題として浮かび上がっていたのです。

課題分析:帰国子女ならではの弱点と、その背景にある思考習慣

Aさんのつまずきは、一見すると日本語への不慣れさが原因のように思えるかもしれません。
しかし実際には、英語でのエッセイ経験が豊富だったことにより、日本語の小論文で求められる構造とのズレが生じていたことが、本質的なつまずきの要因でした。

論理構成のズレ——英語的発想とのギャップ

IBのエッセイでは、抽象的な問いに対して複数の視点を展開しながら、自分の立場を柔軟に構築していくことが求められます。ところが、日本の小論文では“明快な主張と一貫した論拠”が重視されるため、思考の出発点と終着点の明確さが不可欠です。

Aさんの文章には、英語でよく使われる並列的な構成や多義的なニュアンスが混ざり込むことが多く、「結論→根拠→具体例」という日本語的な構造が成立しにくい状態になっていました。

この構造的なズレは、読み手に「何を主張しているのか」が伝わりにくく、説得力を削いでしまう原因となっていました。

対話スタイルの癖——一方通行な語りになりがち

面接練習でも同様の課題が見られました。特に印象的だったのは、一問一答にならず、話が自己完結してしまう癖です。

IBでのディスカッションでは、自分の立場や背景を自由にプレゼンする形式が多く、相手の問いに端的に応じる訓練が不足しやすい傾向があります。

Aさんも、実績や経験を語ることには慣れているものの、「なぜ?」と返されたときに発言を再構成することには不慣れでした。結果として、面接が“伝える場”ではなく“応える場”であるという感覚を得るまでに時間を要しました。

思考パターンの習慣——経験=伝わるという無意識の前提

Aさんに限らず、海外経験が豊富な帰国子女の方の中には、「語れば伝わる」「実績があれば理解してもらえる」という思い込みが根強くあることがあります。

これは、IBなどでの成功体験の蓄積ゆえの“ポジティブな盲点”とも言えますが、入試では「経験の多さ」よりも「どのように語るか」が評価対象となるため、そのままでは通用しません。

「伝えたいこと」ではなく、「聞き手が理解しやすい形で再構成すること」が必要なのだと気づいたとき、Aさんの中で大きな視点の転換が起こりました。

このように、表面的には日本語の運用力に見える課題も、実際には論理構成・対話反応・思考パターンの3層構造である場合はとても多いです。

そのいずれもが非認知能力と深く結びついており、表現力を再構築するためには「考え方そのもの」を整理する作業が必要であると言えます。

指導内容:5か月間の伴走で「伝える力」をどう育てたか

Aさんに対する指導では、ただ語彙や表現を直すのではなく、「伝える力」の土台そのものを育てることに重きを置きました。

これまでIBの中で評価されてきた「多様な観点を持つこと」や「抽象的な思考力」は、もちろん大きな強みです。

ただ、それを日本語で、かつ入試という評価の場で“伝わる形”に変換するには、意識の切り替えと技術的な工夫の両方が必要でした。

志望理由書:「あえて削る」ことで伝わる構成に

最初に取り組んだのは志望理由書の再構成です。Aさんの初稿では、模擬国連での経験や高齢者施設でのボランティア、医療系NPOでの活動など書きたいことが詰め込まれすぎていたため、読み手にとっての焦点が曖昧になっていました。

そこで、まずは「情報を足す」より「意図に沿って削る」ことを徹底しました。

具体的には、「なぜ医学部か」「なぜ筑波大か」「なぜ帰国子女枠での挑戦か」という3つの軸に絞り、それぞれに1〜2文で端的に答える構成に変更。

削る過程でAさん自身が「本当に伝えたいこと」を見つめ直す時間が生まれたことも、大きな意味がありました。

また、文の接続にも工夫を加えました。IB的な長文・複文スタイルから、日本語らしい短く切れ味のある文構成に意識を切り替えることで、内容がより明確に伝わるようになっていきました。

小論文:意見型・課題型を交互に演習。背景知識を論理に昇華

小論文対策では、「事前の構造設計」と「テーマの再定義」を徹底しました。

日本の小論文では、背景文を読み取った上で論点を見極める必要がありますが、IBでは課題文を鵜呑みにせず、自分の視点を自由に展開する傾向が強く、そのままでは論旨がズレやすくなるのです。

そのため、「意見型」「課題型」の問題を交互に出題し、それぞれに対して「問いが何を求めているのか」「どの観点から答えるべきか」を最初に整理するワークを毎回行いました。

また、背景知識の不足ではなく知識をどう論理に変換するかが課題だったため、医療や教育、社会保障といったテーマについて、ディスカッション型の演習も併用しました。

この演習では、Aさんと講師が賛成・反対に分かれ、口頭で即興的に意見を構成する訓練を行い、「抽象→具体」「立場→根拠→提案」という流れを反射的に作れるよう意識づけました。

面接対策:再帰的に掘り下げ、「なぜその答えなのか」を見える化

面接では、「これまでの経験をどう医学に活かしたいか」といった問いに対して、“語りすぎ”によって論点がぼやけてしまうことが顕著でした。

そこで導入したのが、「問い返しを繰り返す」練習法です。

例えばAさんが、「高齢者施設で、うまく言葉を交わせない方との関わりが印象的だった」と語ったとき。

私たちはまずこう問いかけました。 「その経験が、自分にとってどんな意味を持ったと感じましたか?」

一見、素朴な問いかけですが、ここで大切なのは、本人が語った内容の“抽象度”を一段階上げることです。

さらに、返ってきた答えに対して、 「その気付きが、医師としての姿勢にどうつながると思いますか?」 「それは他の経験と比べて、どんな点が違いましたか?」 といった“論理の焦点を絞る問い”を投げかけていきました。

こうしたやりとりの中で、Aさんは次第に、自分の体験が「なぜ語るに値するのか」を自分自身で整理できるようになっていきました。

それはまさに、“伝える”のではなく、“伝わるように構造化する”力を育てるプロセスでもありました。

語彙の整理:英語⇔日本語で「トーン」と「構造」の感覚を修正

最後に取り組んだのは語彙と表現のチューニングです。

Aさんの話し方は、英語で慣れているフォーマルで抽象的な語彙に引っ張られる傾向があり、日本語では“遠回し”で伝わりづらい印象になってしまうことがありました。

そこで、よく使う語彙や表現をリスト化し、「この言い回しは日本語でどう聞こえるか」「どんな言葉に置き換えると自然か」を講師と一緒にすり合わせる時間を設けました。

また、英語でよく使う“However”や“Therefore”などの接続の感覚を、日本語の「とはいえ」「そのために」「一方で」などと丁寧に対応づけ話の論理展開を言語レベルで感覚化していく作業も行いました。

この積み重ねによって、Aさんの語りは「単に言葉が流暢なだけ」ではなく「相手にとってわかりやすい」という方向へと確かに変化していきました。

Aさんの変化と合格までのプロセス

Aさんの指導では、まず「自分の課題がどこにあるのか」を自覚することから始め、その上で「なぜこの演習を行うのか」という目的意識を持ちながら、一つひとつ丁寧に取り組めるようカリキュラムを設計していきました。

1か月後:課題の正体が見え、「だから伝わらなかったのか」と腑に落ちた

指導を始めた初期は、添削よりも「なぜ伝わらないのか」を体感することに重点を置きました。

自分では論理的に話しているつもりでも、相手にとっては「印象が薄い」「論点がぼやける」というフィードバックが続き、その理由を一緒に探っていく中で、Aさんは論理構造のズレに自分で気付くことができました。

「伝え方」の構造そのものが課題だったと腑に落ちたことが、成長のスタートラインとなりました。

2〜3か月後:目的を理解して演習に取り組み、効率的に力がつく

その後の2〜3か月間は、小論文・面接・志望理由書といった演習に本格的に取り組みました。

Aさんは、最初の1か月間で自分の課題が「伝え方」にあることを自覚できたことで、「伝え方を鍛えるため」という目的意識を持ちながら、それぞれの演習に積極的に取り組むことができました。

そのため吸収スピードも早く、伝わりやすい構造の感覚が着実に定着。自分の性質や弱点を正しく理解した上でで、必要な力を意図的に伸ばすという姿勢が、ここからの成長を大きく後押ししていきました。

5か月後:「伝えたい」から「どうすれば伝わるか」へ意識が定着

最終的には、語彙選びや構成、表現のニュアンスに至るまで、常に相手視点を意識して調整する姿勢を身に付けることができました。

「自分はこう言いたい」ではなく、「相手にどう伝わるか」を起点にして言葉を選ぶ習慣が、志望理由書・小論文・面接すべてに共通して現れるようになり、「内容は同じでも印象がまったく違う」という変化を、Aさん自身も手応えとして感じていたようです。

この5か月間で、Aさんは自己理解・目的意識・構造把握力という非認知能力を軸に、表現力そのものを進化させ、筑波大学医学類の帰国子女枠での合格を見事につかみ取ることができました。

「似たような課題があるかも…」と感じた方へ
MEDICAL DIGでは、思考や表現のズレを一緒に整理しながら改善していく個別指導を行っています。
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保護者・本人の感想:“伝える”ことが思考を深めるきっかけに

合格のご報告とともに、保護者さまからは「本人の話しぶりが、以前とまったく違っていた」と驚きの声をいただきました。

特に印象的だったのは、自分の考えを筋道立てて整理し、聞き手の立場を考えて話せるようになっていた点。中身は変わっていないはずなのに、印象の深さがまったく違って感じられたとのことでした。

またAさん本人からも、「話す前に、相手がどう感じるかを自然と考えるようになった」と振り返る声があり、受験のための技術が、思考や表現そのものの質を底上げしたことが伺えました。

講師の視点:帰国子女枠×医学部入試に求められる力とは

帰国子女枠の医学部入試は、英語力や国際経験の豊富さだけで合格できるものではありません。自分の経験をどのように医学部での学びや将来の医師像と結びつけて語れるかが、合否を左右します。

以下では、私たちが実際の指導を通じて感じた「帰国子女枠×医学部入試で問われる力」について、2つの視点から整理します。

“経験”を“論理”に変えるには「問い直す習慣」が必要

例えば、「国際ボランティアに参加した」という経験は、それ自体は珍しくありません。重要なのは、その経験が自分にとってどんな意味を持ち、なぜ医師を目指す動機になったのかを、相手に伝わる形で語れるかどうかです。

そのためには、「なぜ自分はそう感じたのか?」「この出来事は何を教えてくれたのか?」と問い直す習慣が欠かせません。経験を単なるエピソードで終わらせず、価値観や行動の根拠として再構築する力が求められます。

聞く力・構造化する力が試される入試への対策とは

帰国子女枠の面接や小論文では、「決められた答え」ではなく、自分の立場を明確にした上で、問いに合わせて柔軟に語る力が試されます。

つまり、その場で考えを構造的に組み立て直す力や、質問の背景にある意図を読み取る力といった、対話力・構造力が非常に重要です。

MEDICAL DIGでは、「どこに課題があるのか」を受験生ご本人が理解しながら、それに合わせた演習を一つずつ積み重ねていけるようにカリキュラムを設計していきます。

もし、「具体的にどんな対策が必要か知りたい」「我が子の経験をどう活かせばいいか悩んでいる」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

経験を、伝わる言葉へ。私たちがその橋渡しをお手伝いします。

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