近畿大学医学部の入試制度には、一般入試のほかに「共通テスト併用/利用」「地域枠入試」、そして「推薦入試」があります。
関西の医学部の受験を検討している方の中には、近畿大学を第一志望としている方のほかにも、他大学のすべり止めとして近畿大学医学部を検討している方も多いのではないでしょうか。
近畿大学医学部の推薦入試は「一浪でもOK」「内申点不要」「併願可」といった特徴があり、受験するハードルがかなり低く設定されています。そのため出願する人数も多く、倍率は例年8~10倍と非常に高くなっています。
近畿大学医学部の推薦入試の合格発表は12月中旬ですので、第一志望の方はもちろんのこと、すべり止めとして受験する方も「第一志望がダメでも近大がある」という安心感を早めに得ることができます。
経済的に余裕があれば取りあえず受験しておいて損は無いというのが近畿大学医学部の推薦入試となっています。
この記事では、近畿大学医学部現役生が所属するMEDICAL DIGならではの視点で解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
近畿大学医学部の一般公募推薦(倍率・合格最低点・難易度)
最新の情報については、必ず各大学の公式ホームページでご確認ください。
近畿大学医学部の入試制度と各定員数は以下のとおりです。
- 一般入試 …60人(前期55人、後期5人)
- 共通テスト利用 …10人(前期5人、中期3人、後期2人)
- 推薦入試(一般公募) …25人
- 地域枠入試 …17人(大阪府3人、奈良県2人、和歌山県2人、静岡県10人)
最もメジャーなのは一般入試(前期)で定員の約半数を占めており、その次に多いのが推薦入試(一般公募)で25人となっています。
ちなみに、近畿大学医学部では指定校推薦入試は実施されていません。(参考:医学部 医学科 推薦入試(一般公募)|入試シミュレーション|近畿大学入試情報サイト (kindai.jp))
同じ関西の私立大学医学部を見てみると、関西医科大学で10名、大阪医科薬科大学で10名、兵庫医科大学で15名となっていますので、近畿大学の25名という定員は他大学と比べるとやや多いことが分かります。
これだけでも近畿大学医学部の推薦入試の門戸が広く開かれていることが分かりますが、さらに大きな特徴として、「評定平均値を問わないこと」「一浪でも受験可能であること」「併願可能であること」が挙げられます。
まず、「評定平均値を問わない」という点ですが、多くの大学の推薦入試では出願の要件として「評定平均値が4.0以上であること」などの要件が設定されています。
私立大学医学部に限って言えば、日本には現在31の私立大学医学部が存在しており、そのうち19大学が一般公募推薦、指定校推薦、特別協定校推薦など何かしらの推薦入試を実施しています。
ですが、その中で評定平均値を問わない推薦入試はほとんどありません。
例えば、埼玉医科大学推薦入試の特別枠では評定平均値は問わないものの、英検1級取得者やTOEFL600 以上といったように英語力に長けた者や、科学オリンピックなどに参加し好成績を収めた者であることが要件となっています。(参考:入試要項・入試データ | 埼玉医科大学 医学部 受験生サイト (saitama-med.ac.jp))
また、地域枠の募集に関しては、特定の地域の出身者に限って評定平均を問わない形で推薦入試を実施している場合もありますが、定員が非常に少ないほか、そもそもその地域に居住していないと出願できないため、受験のハードルは非常に高いと言えます。
一方、近畿大学医学部の推薦入試は、出身地域や居住地域の限定はありませんし、英検やTOEICの成績を求めるものでもありません。
評定平均値の要件が無く、ほかに厳しい要件も無い推薦入試は非常に珍しいものであり、その分受験生が集まりやすいことを理解しておきましょう。
ただし、評定平均値を全く参照しないわけではなく、募集要項には“個別学力試験の得点と出身高等学校の調査書を総合して合否を判定します。”と記載されています。
「平均4.0以上」などと具体的には示されていないものの、学校の成績も加味されることは押さえておきましょう。いくら門戸が広いとはいえ、「学校推薦」であるという前提は忘れるべきではありません。
もう1点の特徴である「一浪でも受験可能」については、他大学でも一浪を可とする医学部推薦入試は一定数存在しているものの、そもそも推薦入試では特に優秀な受験生を一般入試に先立って合格させることを目的としているため、多くの医学部では出願資格を現役生に限定しています。
また、併願が可能である点も受験しやすさにつながっています。
特に地域枠入試においては合格した場合に必ず進学することが要件になっていることが多く、地域枠でない場合でも、推薦入試の出願は専願のみという医学部は少なくありません。
併願可能とすると、受験生にとっては出願のハードルが下がる一方、大学側にとっては最終的に何人が進学してくるのかが予想しづらく、施設や教員の数に対してキャパシティをオーバーした人数を受け入れることになりかねません。
併願可能な入試制度を設けているということは、大学の施設や教員数にある程度余裕があることの裏付けにもなっています。
さらにもう1点付け加えると、2023年度の入試から近畿大学医学部の筆記試験は他学部との共通問題になりました。
これによって、医学部に特化した対策を行う必要が無くなり、他学部と同じ問題への対策で十分となりました。
この制度変更によって、近畿大学医学部の推薦入試を受験するハードルはさらに下がったと言えるでしょう。
(筆記試験の対策については「2.近畿大学医学部の推薦入試の過去問と対策」で詳しく解説しています。)
まとめると、近畿大学医学部の推薦入試の特徴は以下のとおりとなります。
① 定員が多い(25名)
② 評定平均値の要件が無い
③ 一浪でも受験可能
④ 併願可能
⑤ 筆記試験は他学部と共通
総じて近畿大学医学部の推薦入試は、受験生にとってかなり気軽に受けられる制度となっています。
そのため、定員は25人と多いものの倍率も非常に高く、10倍を超える年もありました。
(参考:入試結果|入試情報・学費|近畿大学入試情報サイト (kindai.jp))
<近畿大学医学部の競争率>
- 2023年度 8.8倍
- 2022年度 7.6倍
- 2021年度 7.7倍
- 2020年度 10.0倍
- 2019年度 12.9倍
合格最低点は概ね6~7割程度となっていますが、上述のとおり2023年度からは全学部共通問題となっているため、今後は7~8割程度に跳ね上がることが予想されます。
(実際に、2023年度の合格最低点は222点と過去5年間で最も高くなっています)
一方で、近畿大学医学部の推薦入試は併願可能ですので、必ず合格辞退者が発生します。
そのことを見越して大学も多めに合格者を出しており、例年募集人数の2倍程度が合格となっています。
合格者の中から実際に近畿大学へ進学する者はさらに少なく、当初の募集人数を下回ることも少なくありません。
このことから、近畿大学医学部の推薦入試は、実態としてより上位の偏差値帯の医学部のすべり止めとして受験する人が多いと言えます。
近畿大学医学部の偏差値が65.0ですので、それより上位の関西の医学部というと、
- 京都大学(72.5)
- 大阪大学(70.0)
- 神戸大学(67.5)
- 関西医科大学(67.5)
- 大阪医科薬科大学(67.5)
となります。
もちろん、近畿大学医学部を第一志望とする人が練習のために受験するのも一つですし、気軽に受験できるのは大きな魅力ではあります。
ですが、国公立を始めとする上位校を第一志望としている人たちとの勝負になることを理解し、たとえ不合格になったとしても必要以上に落ち込まないことが大切です。
なお、スケジュール的には一般入試よりかなり早い時期に試験が実施され、国公立大学の入試本番よりも早い日程で入学時納入金の支払いが必要になります。
入学時納入金は相当の額になっているため、すべり止めとして受験する場合は経済的な面も十分考慮しておきましょう。(参考:2023年度募集要領 (kindai.jp)(学費の一覧はp13))
- 出願期間 11/1(火)~11/10(木)
- 試験日 一次試験…11/20(日)、二次試験…12/4(日)
- 合格発表 一次試験…12/1(木)、二次試験…12/14(木)
- 入学手続締切日 12/22(木)〔入学金と前期授業料等の支払いを含む〕
近畿大学医学部の推薦入試は従来から広く門戸が開かれており、2023年度からは筆記試験が全学部共通問題となったことから、さらに気軽に受験できるようになりました。
推薦入試のためだけに特別な勉強を行う必要もありませんし、面接や小論文も多くの大学で実施されるようなオーソドックスなものです。
すべり止めにしろ、練習としてにしろ、経済的な負担がクリアできる場合は、取りあえず受験しておくことがおすすめと言えます。
・ 近畿大学医学部が第一志望の人(=練習としての受験)
・ より高い偏差値の医学部を志望している人(=すべり止めとしての受験)
近畿大学医学部の推薦入試の過去問と対策
近畿大学の推薦入試は、原則として2教科2科目となっています。
例えば、法学部であれば英語と国語、経済学部であれば英語と国語または数学の選択制となっています。
ただし、情報学部・国際学部・生物理工学部の独自方式は1教科1科目での受験となっているほか、文芸学部芸術学科でも実技のみでの受験が可能となっているなど、一部学部・学科では例外があります。
医学部も例外とされる学部の一つであり、推薦入試の中では唯一3教科3科目(英語・数学・理科)の受験が必要となっています。
また、一般入試と同様に、二次試験で小論文と面接が課されるのも医学部のみとなっています。
○ 理科 ※以下から1科目選択
「物理基礎・物理」「化学基礎・化学」「生物基礎・生物」
9:20~10:20(60分) 100点
○ 外国語
コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III
11:00~12:00(60分) 100点
○ 数学
「数学I・数学II・数学A・数学B(数列、ベクトル)」
13:00〜14:00(60分) 100点
近畿大学の公式サイトに「高等学校の教科書レベル」とはっきりと明記されているとおり、推薦入試の問題の難易度は決して高くはありません。
2022年度以前は医学部においては独自問題が出題されていたため他学部に比べると難易度は高かったものの、2023年度以降は他学部と同様に教科書レベルの問題が出題されることになります。(参考:推薦入試(一般公募)|入試情報・学費|近畿大学入試情報サイト (kindai.jp))
また、数学については一般入試と同じく「数学III」の範囲からは出題されないほか、数学Bについても出題範囲は数列とベクトルのみとなっています。
従って、近畿大学医学部の推薦入試について特別な対策を行う必要はほとんどありません。
特に京大・阪大・神大・関西医科大などの上位校を目指している人の場合は、11月時点の実力でも十分解答できる内容となっています。
もし推薦入試に向けて準備を行いたい場合は、過去問を数年分解いておくと問題のレベル感が分かり、形式にも慣れることができるため安心です。
繰り返しになりますが、2023年度以降は医学部も全学部共通問題となりますので、過去問を解く場合は「医学部」の問題ではなく、他学部の問題を参照するようにしましょう。
近畿大学の過去問については、過去3年分に限り近畿大学の公式サービスである「近パス」でダウンロードすることができます。
問題と解答だけでなく、問題分析や解法の概要を示した資料である「推薦入試の解法と対策」もダウンロードすることができます。(参考:「近パス」について|近畿大学入試情報サイト (kindai.jp))
教科書レベルの問題であれば詳しい解説が無くても解けるという方にとっては、近パスに登録し過去3年分の問題をひととおり解いておくだけで対策は充分と言えます。
近畿大学医学部が第一志望であり確実に合格を狙いたい方や、11月時点では教科書レベルの問題を解ききるのが難しいと感じる方は、近パスだけではやや不十分かもしれません。
詳しい解答解説がついている過去問題集や、教科書レベルの問題集の演習に取り組むと良いでしょう。
近畿大学医学部の推薦入試対策としてオススメの参考書や問題集は以下のとおりです。
○ 英語
・Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition] | 桐原書店 (kirihara.co.jp)
・ 「大学入試 肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本 必修編 音声ダウンロード付」肘井学 [学習参考書(高校生向け)] – KADOKAWA
・ 東進Web書店 東進ブックス: 新・現代文レベル別問題集4 中級編 (toshin.com)
○ 数学
・ 啓林館の高校数学参考書 Focusシリーズ (shinko-keirin.co.jp)
・ 新課程 チャート式 基礎からの数学I+A (chart.co.jp)
・ 数学Ⅰ・A標準問題精講 四訂版 | 旺文社 (obunsha.co.jp)
○ 理科
・ 基礎問題精講シリーズ(旺文社) 物理・化学・生物
・ 良問の風 物理 -改訂版- | 河合出版 (kawai-publishing.jp)
・大学受験Doシリーズ 鎌田の理論化学の講義 改訂版 | 旺文社 (obunsha.co.jp)
・【東京書籍】 教材 生物 ニューグローバル 生物シリーズ (tokyo-shoseki.co.jp)
なお、近畿大学医学部の推薦入試では、二次試験で小論文と面接が実施されます。
具体的な配点は示されておらず、「段階評価」であることのみが示されています。
一般入試の説明会では担当者から「二次試験の対策に力を入れすぎず、筆記試験でしっかり得点してほしい」との発言がありました。
小論文や面接については、医師として最低限の資質を備えているかどうかを確認する目的で行うものであり、合否を大きく左右するものではないという趣旨の発言であると考えられます。
推薦入試についても同じことが当てはまると予想されますので、小論文や面接の対策はほどほどにしておき、筆記試験の勉強に集中するようにしましょう。
推薦入試の日程は11月であり、その後も1~2月ごろまでは近畿大学や他大学の一般入試が続きます。
11月はまだまだ学力が伸びていく時期ですので、この時期に二次試験対策に時間を割くのはもったいないとも言えます。この時期にはできるだけたくさんの問題を演習し、経験値を積んでいただきたいと思います。
また、そもそも二次試験は一次試験通過者のみに課されますので、一次試験で力を出し切れなかったと感じる場合は、次の受験に向けて頭を切り替えることも大切です。
どうしても二次試験が気になる方は、当日の大まかな流れと過去の出題に目を通しておきましょう。
近畿大学医学部の二次試験では、「面接用アンケート」が実施されることが大きな特徴となっています。
試験科目には含まれず評価もされませんが、アンケートの回答内容を元に面接が行われる形となっています。
11月時点で小論文や面接対策を仕上げてくる受験生は少ないためそれほど気負う必要はありませんが、筆記試験の息抜きがてら過去の小論文のテーマに目を通してみて、自分ならどう答えるかをシミュレーションしておくと良いでしょう。
近畿大学医学部の推薦入試のまとめ
この記事では、近畿大学医学部の推薦入試の特徴や対策について詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると以下のとおりです。
- 近畿大学医学部の推薦入試は「定員数が多い」「評定平均値の要件が無い」「一浪でも受験可能」「併願可能」などの特徴がある。
- 他の私立大学医学部に比べると、近畿大学医学部の推薦入試は非常にハードルが低い
- 近畿大学医学部の推薦入試の筆記試験問題は、2023年度から他学部と共通となったため、今後は合格最低点が跳ね上がることが予想される
- 近畿大学医学部の推薦入試の競争率は8~10倍程度
- 京大・阪大・神大・関西医科大など上位校のすべり止めとしても高い人気がある
- 入学時納入金は相当の額であるため、経済的な負担については考慮が必要
- 筆記試験の難易度は教科書レベルであり、特別な対策はほとんど不要
- 二次試験の小論文・面接は段階評価のみであるため、対策には力を入れすぎないよう注意
近畿大学医学部の推薦入試は、評定平均の要件が無いなど、一見すると受験のハードルが低く、受験生にとっては魅力的な制度となっています。
特に近畿大学医学部を第一志望としている受験生にとっては、一般入試の予行演習として気軽に受験できるため、出願しないという選択肢はほぼ無いと言えるでしょう。
一方で、関西の難関医学部のすべり止めとしての人気も高く、合格するためには相当の実力が必要です。
また、合格した場合は12月下旬までに入学時納入金を支払う必要があるため、経済的に余裕の無い受験生にとっては難しい判断を迫られることになるかもしれません。
近大医学部の推薦入試を検討する際には、受験しやすさだけに気を取られすぎず、自分の実力や戦略をしっかりと考えながら受験するかどうかを判断することが大切です。
自分の実力について自分だけで評価するのは至難の業です。
模試の点数や判定だけでなく、どんな解き方をしていてどこでつまずいているのか、勉強のやり方は合っているのかなど、様々な点から分析する必要があります。
塾や予備校で指導されたとおりに勉強しているのに学力が伸びづらかったり、何時間かけてもなかなか暗記ができなかったりするのは、自分自身の行動原理や認知の特性(アトリビュート)と、今の勉強方法がマッチしていないからかもしれません。
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