日本の最難関医学部と言えば、東大医学部と京大医学部。
両者の偏差値はどちらも72.5で、ボーダー得点率は90%を超えています。
偏差値は同じでも、東大と京大で掲げている理念は大きく違います。
生命科学の探究と指導者の養成を第一に掲げる東大と、臨床医へのリスペクトと医学以外にも広がる全人的な知への探求を掲げる京大では、学風からカリキュラムに至るまで様々な点が異なっています。
京都大学医学部を目指す受験生の皆さんには、京大ならではの特徴と強み、すなわち、長い歴史の中で培われた“自由の学風”について深く知っていただき、京大医学部の理念に掲げられているような「自分の頭で考え、新たな知を創出できる人間」へと成長していただきたいという願いがあります。
また、この記事では、京大医学部生の6年間の過ごし方など、京都大学医学部への進学実績が豊富なMEDICAL DIGだからこそご紹介できるリアルな情報をお伝えしていきます。
京大医学部ではどのような6年間を過ごすのか、具体的にイメージしていただき、受験勉強のモチベーションアップにつなげていただければ幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
京都大学医学部の入試制度の特色
京都大学医学部の入試には、一般入試と特色入試があります。
一般入試は、大学入学共通テストと二次試験によって合否が判定されるもので、その難易度は非常に高くなっています。
ボーダー偏差値は東大理IIIと並ぶ72.5で、得点率は2022年度では86%、2021年度は90%、2020年度は91%となっており、9割以上を得点することが前提となっています。
倍率は3倍程度と高くはありませんが、全国各地の精鋭たちが受験するため、共通テストの1点でさえ合否を左右する非常にシビアな戦いとなります。
京大医学部の一般入試を突破するには、物事の本質を深く理解し、難問を自力で解き切る確かな思考力が必要です。医学部専門の塾や家庭教師なども活用しながら、徹底的に対策していきましょう。
京都大学医学部の一般入試に関する詳しい情報や対策については、「京大医学部に合格するための勉強法とは?勉強時間・参考書・過去問の使い方を徹底解説!」の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
もう一つの入試制度である特色入試は、募集人員が5人と非常に少なく、狭き門となっています。
出願資格と推薦要件は以下のとおりです。
- 現役生であること ※ただし、国際科学オリンピック(数学、物理、化学、生物)日本代表として世界大会に出場した者は、翌年度卒業見込み(高2生)でも可
- 学校長の推薦を受けていること
- 調査書の全体の学習成績の状況が概ね4.7以上であること
- ・TOEFL iBT を受験し、Official Score Reports または Test Taker Score Report(原本) を提出すること
- 大学入学共通テストを受験し、その結果を提出すること ※国際バカロレア認定校(DP)の生徒や国際科学オリンピック日本代表者は受験不要
- 合格した場合は必ず京都大学医学部医学科に進学すること
学校推薦型選抜であるため高校の推薦が必須であるほか、「調査書の評定平均4.7以上」という基準も設けられています。
他大学の特色入試で求められる評定平均は4.2以上である場合がほとんどですので、京都大学の求めるレベルは非常に高いことが分かります。
また、国際科学オリンピック出場経験があれば、高校2年生でも出願が可能となっています。
近年では医学研究者の減少が問題視されており、京大としても本気で世界をリードする研究者の卵を見つけようとしていることが分かります。
さらに募集要項には、求める人材像として「MD-PhDコースへの進学を希望すること」が挙げられています。
- 医学・生命科学に深い関心を持ち、かつ真摯な姿勢、熱意を持って真理を探究できる将来の世界の医学をリードするような医学研究者としての資質・適性を持つ人材。
- 1以外でも自然科学の少なくとも 1 領域において傑出した能力を有し、かつ医学研究者としての資質・適性を持つ人材も考慮します。
- 本学が提供するMD-PhDコースへの進学を希望する人材。
MD-PhDコースでは、通常の医学部の臨床研修(京大の場合は5年生~)よりも早い時期から大学院のカリキュラムを取り入れ、単位を取得することができます。
これによって、医学士(M.D)や医学博士(Ph.D)の学位を早く得ることができるため、優秀な人材が研究の第一線でより活躍しやすくなります。
「求める人材像」に示されているとおり、京大医学部医学科の特色選抜では、世界の医学をリードするような研究者を発掘することを目的としています。
提出書類の一つである「学びの設計書」では、大学で研究したい内容を具体的に記述することが求められますので、高校段階で研究の入り口に立っていることは出願の条件になっているとも言えるでしょう。
具体的な選抜方法としては、第一次選考で書類審査が行われ、第二次選考では口頭試問と面接が行われます。
二次試験は口頭試問160点、面接240点の計400点となっており、やや面接に比重が置かれています。
なお、口頭試問の合格者に対してのみ面接が実施されるため、実質的には、
- 第一次選考 書類審査
- 第二次選考 口頭試問
- 第三次選考 面接
といった3段階の選抜になっています。
口頭試問では、物理・化学・生物に関する資料を読んでレポートを作成し、それに基づいた質疑応答を行うことで、論理的思考力や文章構成力などを評価します。
面接試験では、京都大学が望む医学研究者や医師としての適性、社会的能力や科学的能力などを評価します。
特色入試は非常に狭き門である一方、合格してMD-PhDコースに進学すると奨学金制度の対象となることができます。
また、世界の第一線で活躍するような医学者たちに直接師事することができるため、医学に対する高い志と研究への強い熱意のある方は、特色入試に挑戦してみるのも良いでしょう。
★医学部受験の口頭試問や面接対策についてはこちら↓
京都大学医学部のカリキュラムの3つの特色
京都大学医学部では、自由の学風を謳う建学の精神に基づき、他の大学とは一味違ったカリキュラムを取り入れています。
この章では、①単位取得の自由度の高さ、②マイコースプログラム、③MD研究者育成プログラム・MD-PhDコースの3つの観点から解説していきます。
京都大学医学部のカリキュラムの特色①単位取得の自由度の高さ
例えば、同じ偏差値である東京大学理科三類(東大理III)では、2回生まではみっちりと教養科目を履修することが求められます。
一方、京大医学部では、教養科目は4年間で60単位取ればOKという緩やかなルールになっています。
もちろん、学年が上がるにつれ専門科目の履修で忙しくなるため、ほとんどの学生は1~2回生のうちに一般教養科目を履修し終えるのですが、個人の裁量が非常に大きいことは京大の特徴の一つと言えるでしょう。
また、一つ一つの単位が非常に取りやすいのも(カリキュラムの特色ではありませんが)京大の特徴の一つです。一昔前の関西の大学生の間では、
神大の単位は、道端に落ちている
阪大の単位は、地面を掘っても見つからない
などと揶揄されていました。
実際の京大生からよく言われることとしても、代返・代筆は当たり前、明らかに教室に入りきらない人数が履修登録していても全員が単位を取得するといった、いわゆる「楽単(楽に単位が取れる講義)」がたくさんありました。
近年では人材養成機関としての大学の意義が強調され、適切な成績評価や卒業認定を行うよう文部科学省も方針を示していることから、京大と言えども以前よりは単位を取るのが難しくなったと言われています。
ですが、それでも「テストで点さえ取れれば単位がもらえる」といった授業はまだまだ多く、他大学と比べればかなり単位は取りやすくなっています。
与えられた知識をただ覚えるのではなく、大学生という自由な時間の中で、自分の好きなことを好きなように学ぶことが重要であるという考えの教授も多く、「国や大学の方針はあるけれど、自分の授業の進め方・単位の与え方は変えない」と公言している方も多くいます。
真面目に授業に出ることよりも、学友と遊び、時には羽目を外すことも長い人生においては大切です。
もちろん、医学部は他の学部に比べると勉強量が多く、目の前の試験にパスすることを最優先しなければならない場面も多いとは思いますが、サークルやバイトをとおし、豊かな人間性を身に付けていただきたいと思います。
特に臨床医を目指す方は、一人一人の患者さんが持っている様々な背景に思いを巡らせ、患者さんやご家族の思いに耳を傾けることで、病気だけではなく“人そのもの”を診ることが大切になります。
京都大学医学部の理念には、育てるべき人間像として、
(引用元:ポリシー | 京都大学大学院医学研究科・医学部 (kyoto-u.ac.jp))
とあります。
“広く社会と人間行動を理解し病める人の感情を洞察”するためには、座学だけではなく、様々な人と出会い、いろいろな場所に旅をし、自分の心を磨いていくことが大切です。
京大で単位を取ることが「楽」なのは、決してサボることを推奨しているのではなく、時間的な余白の中で豊かな経験をしてほしいという、まさに京大の最大の理念である「自由の学風」に基づくものと言えます。
京大医学部に合格した暁には、自由な時間を最大限に謳歌し、医師として、そして一人の人間としてさらに成長していただければと思います。
★京大と阪大の比較記事はこちら↓
京都大学医学部のカリキュラムの特色②マイコースプログラム
マイコースプログラムとは、4回生の後期に実施される研究活動のことで、この期間には科目講義や試験は一切実施されません。
4回生後期と言うと、大学によっては病院実習が始まる時期ですが、京都大学医学部の場合は「実習の前に一度しっかり研究に従事させる」というカリキュラム編成になっています。
京都大学医学部の理念の一つに、「病気など医学事象の背後にあるものを見抜き、自分の頭で考え、新たな知を創出できる人間」を育成することが掲げられています。
京都大学医学部は、既存の症例を調べて従来どおりの治療を行う医師ではなく、一つ一つの事象について自分の頭で考え、「前例どおりで良いや」と思考停止することなく、新たな知識を生み出せる医師を養成することを目指しています。
実習の前に研究現場を体験させるというマイコースプログラムは、こうした京大医学部の理念に基づくものであり、研究者志望ではない臨床医志望の学生たちにこそ意義のあるものと言えるでしょう。(参考:教育プロジェクト | 京都大学大学院医学研究科・医学部 (kyoto-u.ac.jp))
なお、マイコースプログラムは、4回生後期に実施される研究活動のみを指すのではなく、入学後から始まるラボ・ローテーション(研究室巡り)から卒業後の臨床研修や大学院進学までを通じた、一人一人の学生にあった学習活動(マイコース)を指しているとのことです。
したがって、マイコースプログラムには、上述したような批判的思考の育成だけでなく、京都大学の基本理念である「自学自習」の精神に基づいた自己研鑽を期待するという意味も含まれています。
実態としては、学生によって研究活動に対する熱量はまちまちであり、京大病院で淡々と研究をこなす学生もいれば、海外の研究室に留学して自分の関心分野を徹底的に究める学生もいます。
評価については活動報告書を作成し、カリキュラム企画委員会で修了認定を行うという形ですので、よほどのことが無い限り不認定となることはありません。
5回生からはいよいよ病院実習が始まるため、「4回生後期の時期に、体力的にも精神的にも少し余裕のある状況を作れるのはありがたい」というのが京都大学医学部生の本音のようです。この点においても、自由を重んじる京大らしさが現れていて興味深いですね。
京都大学医学部のカリキュラムの特色③MD研究者育成プログラム、MD-PhDコース
京都大学医学部においては、優秀な臨床医を育成することと並んで、我が国の基礎医学研究を担う人材を育成することも重視しています。
利根川進氏、山中伸弥氏、本庶佑氏と、京都大学はこれまで多くのノーベル生理学・医学賞受賞者を輩出してきました。
これらの研究の意志を受け継ぎ、これからの基礎研究を担う人材を育成することは、日本、ひいては世界の医学の発展に寄与することになります。(参考:京都大学|ノーベル賞 受賞者のメッセージ (kyoto-u.ac.jp))
他方で、日本における医学部出身の基礎研究者は年々減少しており、基礎医学研究の将来が危ぶまれる状況にあります。
そこで京都大学医学部では、入学直後から研究に親しみ、世界の第一線で活躍する研究者たちに師事できるよう、「MD研究者育成プログラム」「MD-PhDコース」といったカリキュラムを用意しています。
MD研究者育成プログラムでは、1回生の前期から研究室紹介と希望調査、基礎的な実験実習の集中講座が実施され、後期には研究室に入って実際に研究活動を行います。一般的な理系学生に比べるとかなり早い段階から実践的な研究に携わることができ、1回生から既に「研究者見習い」のような活動が始まることになります。
- 1回生前期
- 研究室紹介(4~6月)
- 火曜日の4・5限に、1研究室20分程度の研究室紹介が実施されます。各研究室の研究内容や雰囲気を知ることで、今後ラボ・ローテーションで回りたい研究室を検討する際の参考とすることができます。
- 希望調査(6~7月)
- MD研究者育成プログラムへの正式な参加登録を行い、希望する研究室の教員との面接等により1期目のラボ・ローテーションの配置先が決定されます。最初から選択肢を狭めすぎずに、幅広い研究分野に興味を持ち検討することが推奨されています。
- 基礎分子生物学実習(夏休み)
- ラボ・ローテーションに先立ち、分子生物学実験の基本的な手技を5日間の実習で集中的に体験・習得します。
- 1回生後期~2回生後期
- ラボ・ローテーション(6か月×3ターム)
- 1回生の後期から、6か月×3タームのラボ・ローテーションが始まります。
6ヶ月ごとに研究室を変更することも可能ですが、同じ研究室での活動を継続することもできます。日中は通常の授業を受ける必要があるため、放課後や長期休暇が主な研究活動時間ですが、2回生の火曜午後には通常授業は無いため、ラボでの活動に充てることができます。
- 3回生~6回生
- ラボ配属
- 3回生になると1つのラボに所属し、より本格的に研究を行っていきます。4回生後期のマイコースプログラム期間では、他の講義や実習が無いので研究活動に集中できます。
また、5回生からは病院実習が始まりますが、イレクティブ(選択)実習期間には研究室で活動することができます。
MD-PhDコースとは、医学研究者を志す学生が医学博士号を取得しやすくするための制度で、「学部挿入型」と「卒後進学型」の2つの制度があります。
4回生修了後に医学部を休学し、大学院博士課程に進学します。
博士号取得後に5回生に復学して医学部を卒業し、医師免許を取得します。○MD-PhDコース(卒後進学型)
医学部を卒業し医師免許を取得した後、2年以内に基礎系の大学院博士課程に進学します。
修業年限の特例措置による学位申請が可能ですが、このコースに進むためにはMD研究者育成プログラムを修了し、進学審査に合格する必要があります。
さらに京都大学では、基礎医学研究者の養成を促進することを目的に、東京大学・名古屋大学・大阪大学と共同で「基礎医学研究者養成イニシアチブ」という事業を実施しています。具体的な取組は、以下のとおりです。
上述の4大学を含めた全国のMD研究者育成プログラムの登録学生が集まり、各自の研究内容に関するポスター発表や口頭発表を行います。研究発表だけでなく、学生同士の交流を促進して親睦を深めることも重要な目的となっています。○国内短期研究留学
夏休み・春休みなどの長期休暇中に、他大学の基礎系研究室に滞在し研究活動に参加します。京都大学の学生の場合は、マイコースプログラム期間(4回生後期)やイレクティブ実習期間に参加することができます。
○4大学合同ラボツアー
各大学の基礎系ラボを訪問し、実験施設や機器を見学したり、先端的な研究内容に関するセミナーを聴講したりします。
MD研究者育成プログラムやMD-PhDコースといった医学研究者の養成コースに限らず、京都大学では世界の一線で活躍する教授陣の授業を受けることができます。
研究者志望でない方も、トップレベルの研究者の授業を受けられるという貴重な機会を堪能し、医師としての糧にしていただければと思います。
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京都大学医学部の6年間の過ごし方
これまでご紹介してきたとおり、京都大学医学部には長い歴史と自由の学風の理念に基づく様々な特長があります。
この章では、そうした学風の中で学生たちが実際にどのような6年間を過ごしていくのか、具体的に解説していきます。
京都大学医学部の6年間の過ごし方①1回生
京都大学と言えども、取得しなければならない単位などは他大学と変わりません。
基本的には一般教養と医学部の専門科目をコツコツと取っていくことになります。
医学とは直接関係が無く、学部生として最低限の教養を身に付けるために取得する単位。他の学部と共通である場合が多く、様々な学部の人が入り混じって受講する。
自分の興味がある科目や単位取得が楽な科目などを選択する人がほとんど。○医学部専門科目
一般教養と違い、各自で選択するのではなく大学が定めた科目を必ず履修するもの。
なお、医学部専門科目は、医学を学問的に研究する「基礎医学」と、医師として患者を診察・治療するために実践的な知識を身に付ける「臨床医学」の2つに分かれる。
1回生では、このうち一般教養科目を中心に単位を取得していくことになります。
「2-1.京都大学医学部のカリキュラムの特色①単位取得の自由度の高さ」で紹介したとおり、京都大学の一般教養科目は単位を取るのが非常に楽な授業が多く、
- 出席は不要
- テストで点が取れればOK
- テストの内容が事前に知らされる
という場合も多くあります。
そのため、週に20コマ以上選択していても、実際に出席するのはせいぜい5コマ程度という学生もたくさんいます。
1回生での目標取得単位は40単位ですが、多くの学生は楽々とこの目標を達成することができます。
ただ、中には楽観視しすぎて単位を落とす学生もいますので、適度に息抜きをしつつ、計画的な単位取得を心掛けましょう。
京都大学医学部の6年間の過ごし方②2回生
2回生になると、医学部専門科目の履修が始まります。
医学部6年間の中で最も試験が厳しいのが2回生で、留年する人も一番多い学年になっています。
専門科目は、基礎医学である「解剖」・「生化学」・「組織」・「生理」・「発生」・「神経」・「微生物」の7分野から履修していきます。
解剖の授業では、実際に献体にメスを入れながら学んでいくため、多くの学生が“自分は医学部生なのだ”と改めて実感することになります。
一般教養の楽さとは一転して、専門科目の試験は非常に厳しいものとなっています。
出席が求められないのは一般教養科目と同じですが、単位の取得率は分野によっては50%程度となることもあり、ある年の生化学の試験では75%が不可であったという話もあります。
京都大学医学部に合格する知力の持ち主でも不合格になるとは恐ろしい話ですが、日々コツコツと勉強を積み重ねること、また、不合格となっても諦めずに再チャレンジする粘り強さが求められます。
京都大学医学部の6年間の過ごし方③3回生
3回生でも、引き続き基礎医学の科目を履修していきます。
具体的には、「免疫」・「病理」・「薬理」・「法医学」の4分野で、中でも病理は特に難解です。
余談になりますが、病理に次いで難関な薬理と神経を合わせて、「薬(疫)病神」と揶揄するのは、医学部界隈では非常に有名なエピソードです。
内容が難しいからと言って試験を受けないわけにはいきませんので、京大医学部生は2回生~3回生前期にかけて、受験時代と同等かそれ以上に勉強に勤しむ必要があります。
3回生後期からは臨床医学が始まります。
臨床医学では、呼吸器科・消化器科・循環器科などの診療科ごとに授業が行われます。いずれの内容も基礎医学に基づくものですので、基礎医学の試験を乗り越えてきた学生にとってはそれほど難しいものではありません。
また、引き続き授業への出席は必須ではなく、さらにテストの内容を事前に教えてくれたり、過去問と似たような問題を出してくれたりする教授も多いため、基礎医学に比べるとかなり気楽な期間となります。
京都大学医学部の6年間の過ごし方④4回生
4回生前期では、3回生後期に引き続いて臨床医学を履修します。
4回生になったからと言って内容が難しくなるわけではありませんので、医学部6年間の中で4回生前期は最も平和な期間と言えるかもしれません。
4回生後期では、「2-2.京都大学医学部のカリキュラムの特色②マイコースプログラム」で紹介したとおり、マイコースプログラムで研究室に所属し、それぞれの好きな分野について研究していきます。
マイコースプログラムの履修後は、CBT・OSCEと呼ばれる共用試験を受験することになります。
これらの共用試験は、医師免許を持たない医学部生たちが臨床実習で実際に患者さんを診察するにあたり、「医学に関する確かな知識を持っているか」ということを事前に確認するために実施されます。
CBTでは、30,000問以上プールされた問題の中からランダムに選ばれた問題を解いていきます。合格基準は大学ごとに設定されていますが、京都大学の基準はそれほど高くなく、ほとんどの学生が合格できます。
知識面を問うCBTに対して、OSCEでは医師としての実務能力が測られます。面接と6つの実技試験を行いますが、こちらも京大の合格基準はかなり緩く、不合格となることはほとんどありません。
京都大学医学部の6年間の過ごし方⑤5・6回生
5・6回生からは、いよいよ病院実習が始まります。
これまで授業への出席をほとんど求められてこなかった京大医学部生にとって、「毎朝起きて、病院に行く」というのは生活上の大きな変化となります。
実際に医療現場で働くことのプレッシャーも相まって慣れないうちはしんどいかもしれませんが、できる限り生活のリズムを整え、しっかりと息抜きをして心身のバランスを取っていきましょう。実習早々に医者の不摂生にならないよう気を付けたいですね。
臨床実習は、医療現場を知るだけでなく、「自分がどんな病院で働きたいか」「医師としてどのように働きたいか」を考える機会でもあります。京大病院だけでなく系列の病院に配属されることもありますが、周りの様子をしっかりと観察し、先の就職を見据える機会としていきましょう。
6回生の後期は、実習も授業も一切ありません。
国家試験に向けた勉強期間となりますが、大学からのサポートは無く自分一人で勉強していくことになります。京都大学医学部に合格し、さらに6年間にわたり医学部生として鍛錬を積んできた方であれば、国家試験でつまずくということはまずありません。
勉強期間も約半年とたっぷりありますので、落ち着いて対策すれば問題無く合格できます。
国家試験に合格し無事卒業できると、いよいよ医師として働くことになります。
卒業は医学生としてのゴールですが、医師としてはスタートです。京都大学医学部での経験を生かし、患者さんだけでなく、社会全体に貢献できる医師を目指しましょう。
★京都大学医学部に合格するための勉強法はこちら↓
【京大医学部】このままで合格できるか心配な方へ|簡単合格率チェック
京都大学医学部を目指す受験生や保護者さまの中には、「今の勉強方法を続けていて、合格できるのだろうか…?」と不安を感じている方もいらっしゃると思います。
このままのペースで勉強を続けていいのか、今の自分の勉強方法が合っているのか知りたい方は、ぜひ以下の「合格可能性チェックリスト|京都大学医学部編」をお試しください。
- 参考書や問題集選びに時間を掛け過ぎてしまう
- 問題を手当たり次第に解いていて、取捨選択していない
- 「とにかく時間を掛けて勉強すれば良い」と考えている
- 「問題集を2周する」など問題を解くことが目的になっている
- 今、優先して対策すべき科目や単元が分からない
- 初見の問題を解くのが苦手
- 問題をなぜ間違えたのかについて考える習慣が無い
- 受験までの残り時間から逆算して計画を立てることができていない
- 自分よりも勉強時間が少ない人にテストの点数で負けることがある
- 自分が志望校に合格するイメージが持てない
- 0項目
- 順調に受験勉強が進められています!このままのペースで頑張りましょう。
- 1~2項目
- 良いペースですが、もう少し勉強の効率を上げることができそうです。
- 3~5項目以上
- 改善の余地がかなりあります。まずは1日のスケジュールから見直しましょう。
- 6項目以上
- かなり合格の可能性は低いです。本当に京都大学医学部に進学したいのか、今一度じっくり考えましょう。
チェックリストで3項目以上に当てはまった人は、京都大学医学部を目指すに当たって、まだまだ勉強への取り組み方を改善していく必要があります。
また、それぞれのチェック項目からは、今の自分に不足している「非認知能力(※)」を見つけることができます。
学力テストや知能検査などによって、数値として測ることのできない能力のこと(例:自己肯定感、目的思考力、自立心、課題発見力など)。
学力の伸長と非認知能力には相関関係があることが明らかになっている。
(参考:平成30年度埼玉県学力・学習状況調査データ活用事業における分析結果概要(統計分析) (saitama.lg.jp))
例えば、チェック項目⑩に当てはまる人は、「自己肯定感」や「自己効力感」に課題があると考えられます。
「自分はきっとできる」と自分自身を信じることができてこそ、人は前向きに頑張ることができます。
「自分には無理だ」と思ってしまっていると、本当は頑張ればできることでも、心のどこかで無意識に諦めてしまい、本来の力が発揮できないことがあります。
京都大学医学部のような超難関校を目指す場合は、前向きな気持ちで粘り強く努力し続けることも非常に大切です。
自信が無く後ろ向きな気持ちになってしまうことが多い方は、息抜きに簡単な問題を解いて自信を付けたり、1年前の自分の点数と今の自分の点数を比べてみたりして、「頑張ればできる」という前向きな気持ちを持つようにしましょう。
他にも、チェック項目①~④に当てはまる人は、「目的思考力」が不足していると考えられます。
一例として、「①参考書や問題集選びに時間を掛け過ぎてしまう」については、本来は良い参考書や問題集を選ぶことは目的ではなく、そこに載っている問題を解くことが目的であるにも関わらず、「参考書や問題集を選ぶ」という目的以外の行動に時間を費やしてしまっています。
「目的から考えて行動する力」は、特に京都大学などの難関医学部を受験する場合において非常に大切です。
というのも、“合格するために今何をすべきか”を考え行動することが、効率よく学習を進めることにつながります。
やみくもに問題を解くのではなく、「なぜこの問題を解くのか」という目的意識を持つことで、漫然とただ問題量をこなすという勉強方法から一段ステップアップすることができます。
さらに、「目的から考えて行動する力」は個々の問題を解く際にも重要です。
問題文を読んだときに、「この問題で問われていることは何か」「問題作成者の意図は何か」というように、その問題の“目的”が考えられるようになると、解法の糸口も見つけやすくなります。
上述のチェックリストでは、①~④や⑩以外の項目も、それぞれ「客観的思考力」「計画力」などの非認知能力に対応しており、MEDICAL DIGの非認知能力診断を受けていただくことで、ご自身の非認知能力の強みと課題をさらに詳しく分析することができます。
「毎日勉強を頑張りたいのに、ついついサボってしまう」
といった方は、「自己肯定感」や「目的思考力」などの“非認知能力”に課題があるのかもしれません。
MEDICAL DIGでは、学習指導に先立って、まずは無料相談で現在のお悩みや課題を詳しくお伺いし、その際に併せて「非認知能力診断(30分程度)」を実施します(非認知能力診断も無料で実施させていただきます)。
そして、生徒さまの非認知能力の強みと課題を分析し、より詳細なデータを元に進路指導や授業内容の検討、カリキュラム作成などを行ってまいります。
色々な塾や予備校を試したのに学力が伸びなかった方や、たくさん勉強しているのにテストの点数が上がらないといった「伸び悩み」の問題を抱えている方は、ぜひ一度非認知能力に特化したMEDICAL DIGのサービスをお試しください。
京都大学医学部の特徴のまとめ
この記事では、京都大学医学部の特徴について詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 京都大学医学部は、東大理科III類と並ぶ偏差値72.5の超難関である
- 京都大学医学部の入試には、一般入試と特色入試の2つがある
- 京都大学医学部の特色入試では、評定平均4.7以上など非常に高いハードルが課されている
- 京都大学は、他大学に比べて単位取得の自由度が高いことが特徴の一つとなっている
- 京都大学医学部では、独自のカリキュラムである「マイコースプログラム」を実施しており、医学生の批判的思考の育成を目指している
- 京都大学医学部は、世界を牽引する医学研究者を養成するため、「MD研究者育成プログラム」や「MD-PhDコース」を設けている
- 京都大学医学部では、6年間をとおして自律的に学ぶことが求められ、京大の基本理念である「自由の学風」を体現したものとなっている
京都大学医学部の特徴は、同じ偏差値である東大理IIIと比較することで顕著に現れます。
京都大学医学部では、京大の理念である自由の学風に基づき、自ら学び考えることが求められるため、ある意味では自由に、ある意味では自分の責任で学んでいく必要があります。
京大での学び方が自分に合っているかどうか、志望校を検討する際にはしっかりと考えるようにしましょう。
どんな学校を選ぶ場合にも言えることですが、進路を検討する際には、単に「偏差値が高いから」「有名だから」という理由で選ぶのではなく、その学校の理念や校風を入念に調べ、自分が本当に行きたいと思える学校を選ぶことが大切です。
医学部専門個別指導MEDICAL DIGでは、医学部受験の指導経験が豊富な講師たちが、志望校選びから二次試験の対策まで、徹底的にサポートいたします。
また、MEDICAL DIGでは非認知能力に着目した学習指導を行っています。
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そして、生徒さまの非認知能力の強みと課題を分析し、より詳細なデータを元に進路指導や授業内容の検討、カリキュラム作成などを行ってまいります。
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志望校への合格を目指し、一緒に頑張りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。