近畿大学医学部の二次試験では、小論文と面接試験が実施されます。
小論文はテーマ型の出題となっており、医学分野で近年注目されている話題や医療倫理に関する問題が多くなっています。
字数は400字程度とそれほど多くないため、短い文字数の中で簡潔に自分の考えをまとめるトレーニングが必要です。
面接試験については、事前にアンケートが取られるというやや特殊な形式となっています。こちらも問いに対して簡潔に答えるとともに、事前アンケートの内容が面接で掘り下げられることを予想して回答していく必要があります。
一方、二次試験で課される小論文は段階評価、面接は評価無しとなっています。一次試験・二次試験の配点バランスから見ると、圧倒的に一次の筆記試験の重みが大きいため、まずは筆記試験の対策を優先しましょう。
この記事では、現役の近畿大学医学部生の経験などを元に、近畿大学の二次試験対策について徹底的に解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
近畿大学医学の二次試験(小論文・面接)の基本情報
近畿大学医学部の入試制度は、大きく分けると以下の4つになります。
②一般入試(前期・後期)
③地域枠入試
④共通テスト利用方式(前期・中期・後期)
このうち、いわゆる学力試験については制度ごとに科目や配点が異なります。
英語・数学・理科が主な試験科目となりますが、共通テスト利用方式の中期・後期では、国語も利用できることが特徴となっています。
一方、二次試験で実施される小論文と面接については、いずれの入試制度においても共通で実施され、点数化はされず段階評価となっています。
近年の大学入試説明会では、担当者から「しっかり一次試験の対策をしてください。小論文の勉強はしすぎないように」という趣旨の発言がありました。
医学部の二次試験の重みは大学によってかなりの幅がありますが、近畿大学医学部については、小論文・面接の重みはそれほど大きくないと考えて良いでしょう。
・小論文・面接の重みが小さい
→医師としての最低限の資質があるか確認するのみなので、特別な対策は不要(例:京都大学、大阪大学、近畿大学など)
・小論文・面接の重みが大きい
→学力試験と同等かそれ以上に、受験生の“人となり”を重視する。
グループディスカッションやMMIなど特殊な面接形態である場合も多く、対策が必要(例:秋田大学、自治医科大学、東京慈恵医科大学など)
なお、近畿大学医学部の筆記試験については、数学で数IIIが出題されないなど難易度は高くなく標準レベルであり、ボーダー得点率も60%程度となっています。
出題科目である英語・数学・理科のうち、どうしても苦手な科目があり点数が伸びづらい人でも、その他の科目で8割程度得点できれば十分に合格を狙える難易度になっています。
そのため、科目ごとの得点差が大きい方にとって近畿大学の受験制度はオススメと言えます。
ほかの受験生と差が付きやすい数学についてはこちらの記事(▼【近畿大学医学部】数学の傾向と対策|過去問・解答速報)で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
近畿大学医学部の小論文対策|過去問と模範解答
近畿大学医学部の小論文は、「テーマ型」の出題となっています。
「テーマ型」とは、論じるテーマだけが与えられる小論文の形式のことで、比較的自由度が高い一方、そのテーマについて知識が無いと太刀打ちができないという側面があります。
・テーマ型
テーマだけが与えられ、それについて論述する形式。
自分の考えを自由に述べてよい一方、テーマについて知らないと得点が難しい。
・課題文型
課題文を読み、それを踏まえた内容で論述する形式。
課題文を正しく理解する読解力と、自分の考えを整理して述べる論理力・表現力の両方が必要。
・資料読解型
与えられた資料を読み解き、それについて論じる形式。
資料を正しく読み取るだけでなく、その裏にある出題意図を見抜く力も必要。
また、近畿大学の医学部の小論文は、テーマ型の中でも「オープンクエスチョンタイプ」または「キーワードタイプ」で出題されています。
オープンクエスチョンタイプとは、「~についてどう考えるか」「~とはどのようなものか」といった問いに対して、自分なりの考えを自由に(=オープンに)述べていく形式になります。
オープンクエスチョンに対し、「賛成または反対の立場から述べよ」というように、立場を限定して(=クローズドに)述べる形式の小論文は「クローズドクエスチョンタイプ」と呼ばれます。
近畿大学医学部では、オープンクエスチョンタイプだけでなく、キーワードタイプの出題がされることもあります。
キーワードタイプとは、「○○について意見を書きなさい」「○○について論じなさい」というようにキーワードのみが与えられ、具体的な問いが無いタイプの出題形式となります。
近畿大学医学部の過去問を見てみると、オープンクエスチョンタイプとキーワードタイプが半々くらいの割合となっています。いずれのタイプの場合も、まずは自分で課題を提起し、それに対して論じていくというパターンを作ると良いでしょう。
○2022年前期<オープンクエスチョンタイプ>
本学部では「人に愛され、信頼され、尊敬される」医師を育成することを教育の目的と定めている。学生の立場から、何を学べば「人に愛され、信頼され、尊敬される」医師になれると考えるか。
思うところを述べなさい。
○2022年後期<キーワードタイプ>
新型コロナウイルスワクチン接種の副反応が若者に及ぼす影響について、科学的・社会的な側面から考察してください。
○2021年前期<オープンクエスチョンタイプ>
医学教育の大きな指針として「今後も起こるであろう様々な社会の変化に対応できるような医師の養成」があげられている。では、医師としてどのような能力を持っていれば、「様々な社会の変化に対応」することができるのか。
医学部での学修に関連付けて、思うところを記せ。
○2021年後期<オープンクエスチョンタイプ>
新型コロナ感染症が流行していますが、医師となった場合に、このような事態に対しどのように行動したいと考えていますか?
○2020年前期<キーワードタイプ>
医師の資質として「知識」「技能」「態度」が必要とされており、医学部ではこれら全てを教育し評価する。
これらのうち、医師の資質としての「態度」とはどのようなものを指すのか、思うところを記せ。
○2019年前期<キーワードタイプ>
医療における『男女共同参画』について意見を述べなさい。
○2019年中期<キーワードタイプ>
AI(人工知能)が医師の仕事を奪うという意見について考えを述べよ。
○2019年後期<キーワードタイプ>
わが国はこれまで国民皆保険制度をとってきた。わが国の今後の医療保険制度の在り方について思うところを述べよ。
近畿大学医学部の小論文の字数は400字程度、試験時間は40分となっています。
原稿用紙1枚分と考えるとそれほど多い分量ではありませんが、限られた字数の中でしっかりと論旨を立て、論理的に展開していくためにはある程度のトレーニングが必要です。
これまで小論文を全く解いたことが無いという方は、まずはこの「論の組み立て」について知ることから始めましょう。特に作文を書くとき、メモを作らずにいきなり書き始めてしまう人は要注意です。
小論文を書くときには、
②その理由は何か
③具体例
の3つをメモしましょう。
これが小論文の骨組みになり、これに肉付けしながら字数を調整していくのが基本です。
また、小論文の構成は、
ii.その主張の根拠、理由 「なぜなら~だからである」
iii.具体例 「例えば~という事例がある」
iv.結論(=主張と同じ) 「したがって私は~だと考える」
のたった一つしかありません。
小説やエッセイ、コラムであればトリッキーな構成が魅力になることもありますが、小論文はあくまで試験ですので、構成や文体で個性を出す必要はありません。正しく論を展開し採点者に伝わるよう、きっちりと型を守って書いていきましょう。
なお、この論の展開の仕方は「PREP法」と呼ばれることもあります。
小論文だけでなく、プレゼンテーションなどビジネスの場面でも使える手法ですので、是非使いこなせるようになっておきましょう。
<PREP(プレップ)法>
①Point(結論)②Reason(理由)③Example(具体例)④Point(結論)の頭文字を取って「PREP法」と呼ばれる。
小論文の練習をするときには、「型を守ること」と「先生にフィードバックをもらうこと」が大切です。
自分で書いた文章を自分で採点するのは、プロの作家でも難しいものです。模範解答を見て自分で「書けた/書けなかった」と判断するのではなく、必ず学校や塾の先生に見てもらいフィードバックをもらうようにしましょう。
何回か小論文を書いてフィードバックをもらうことで、自分のクセや弱い部分も見えてくるはずです。構成力が弱いのか、それともテーマに対する引き出しが少ないのかで対策も変わってきますので、まずは信頼できるフィードバックをもらうことから始めましょう。
ただし、冒頭で述べたとおり、近畿大学医学部の小論文の配点は非常に小さいため、時間や労力をかけ過ぎるのは悪手です。
一次試験の対策が十分できてから取り組むようにし、時間が無い場合は過去問を2~3問解いてみるだけでも良いでしょう。
近畿大学医学部の面接対策
近畿大学医学部二次試験の面接では、事前にアンケートが実施されることが大きな特徴となっています。
アンケートの記入時間は20分間で、解答用紙にはマス目があります。
制限時間内に簡潔に答えることが必要なため、アンケートといえども侮ることはできません。
また、アンケートで回答した内容について面接で聞かれる場合もあるため、それらしい回答を上辺だけで書くのではなく、回答について深く突っ込まれても答えられるよう、自分なりに根拠のある答えを書くことが大切です。
・近畿大学医学部の志望理由 ※頻出項目。200字程度。
・勤務医・開業医・研究医のいずれを志望するか。
・あなたがなりたい医師はどれか。順番を付け、理由も述べよ。
A:患者・家族に信頼される医者 B:高度な専門性を持った医者 C:社会に貢献する医者
・医師に必要な能力<幅広い知識、高度な専門技術、人間性の豊かさ>の3つに順位をつけ、その理由を述べよ。
面接については、志望理由や自己PR、自分の長所と短所といったオーソドックスな質問に加えて、アンケートの内容や小論文を受けての感想など、医学に関する深い質問もされます。
過去の質問の傾向を分析してみると、医学関連の質問は「医師にとって必要な資質とは」「理想の医者とは」といったように、臨床医の在り方を問うような質問が多くなっています。
近畿大学医学部の求める学生像は、「何となく医師になりたいから(なれるから)、医師を目指す」というものではなく、自分なりの理想の医師像を持ち、目標に向かって学修できる人であると言えるでしょう。
“医師としての資質”と言われると身構えてしまうかもしれませんが、自分が将来どんな医師として働きたいのか、具体的に考える機会だと捉えると良いでしょう。
面接と言っても、面接官と何時間も話し合うのではありません。
せいぜい10分程度の時間の中で話せることは限られていますので、浅く広く医療分野に関わる知識を身に着けておき、どの方向の質問でもある程度答えられる状態を目指しましょう。
広く浅い知識を持っていれば、アンケートや小論文で多少知らないテーマが出たとしても、回答の中で自分の知っている/話せる内容にうまく話を誘導することもできます。
近畿大学医学部の面接のポイントは、
②医療分野について最低限の知識があること
の2点です。
面接の配点がそれほど高くない近畿大学医学部においてこの2点を最も効率良く抑えるには、ドラマや小説、漫画などのフィクション作品に触れるのがおすすめです。
世の中には多くの“医療モノ”の作品があふれています。
もちろん、時代背景があまりにも現代とかけ離れていたり、医療の中でも特定の分野だけにフォーカスしたりする作品はおすすめできませんが、医療分野全体の話題を幅広くカバーするとともに、「こんな医師になりたい!」と思える魅力的なキャラクターが登場する作品も数多くあります。
例えばドラマ化もされた医療マンガの『コウノドリ』は、周産期医療をテーマとした作品ではありますが、医師と患者のコミュニケーションの在り方や過疎地の医療、研修医のスーパーローテート方式など、様々な観点から現代医療の問題に鋭く切り込んでいる良作です。
もちろん、マンガばかり読んでいては受験勉強がおろそかになってしまいますが、ドラマや漫画を通して程よく息抜きをしながら医療について関心を高めることは、面接対策だけでなく「医師になりたい」というモチベーションを保つことにも有効です。
その他の面接の注意点としては、「簡潔に話す」という意識を持つことが大切です。
緊張していると、話しているうちに自分でも何が言いたいのかわからなくなってしまうのはよくあるパターンです。
面接でも小論文と同様に、まずは結論を簡潔に一文で話し、その後に理由や具体例を付け足していくと良いでしょう。
○良い例
医師にとって必要な資質は「人間性の豊かさ」だと考えます。
なぜなら、患者さんの信頼無しには適切な治療は行えないからです。例えば、私はアドヒアランスが非常に重要だと思っていて…
○悪い例
アドヒアランスという考え方があるように、患者さんが納得の上で積極的に治療を受けることはとても大切で、そのためには医師と患者がしっかりと信頼関係を築くことが重要だと思うので、私は医師として必要な素質は…
面接の練習をする際には、頭の中だけで回答を考えるのではなく、必ず声に出して答えるようにしましょう。また、小論文と同様に、他の人からフィードバックをもらうことが大切です。
高校の先生など面接官の立場になったことがある人の意見が最も参考になりますが、友人や親などに率直な意見をもらうのも良いでしょう。
ただし、小論文と同様に、近畿大学医学部の面接の配点はそれほど高くありません。
大切なのは一次試験対策ですので、面接の対策はほどほどにしておき、しっかりと学力を定着させることを優先しましょう。
近畿大学医学部の二次試験(小論文・面接)のまとめ
この記事では、近畿大学医学部の二次試験について、小論文と面接の対策をそれぞれ詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
・近畿大学医学部の二次試験は小論文と面接だが、配点はそれほど大きくない
・近年の入試説明会では、担当者から「一次試験の対策に重点的に取り組むように」という発言があった
・近畿大学医学部の二次試験では、受験生を精査することよりも、医師として最低限の資質を持っているか確認することが目的となっている
・近畿大学医学部の小論文はテーマ型で400字
→医療分野について幅広く知識と関心を持ち、自分の意見を持つことがポイント
・400字で文章をまとめる際には、「主張」「理由」「具体例」の3つを骨組みにしながら肉付けを行う
・文章の構成は①主張(Point)②理由(Reason)③具体例(Example)④結論(Point)(=PREP法)の1パターンだけで良い
・小論文は自己採点せず、必ず先生にフィードバックをもらうようにする
・近畿大学医学部の面接では事前アンケートが実施されることが大きな特徴
・アンケートは100~200字で簡潔に答えるとともに、面接で深く聞かれても答えられるように回答することがポイント
・近畿大学医学部の面接で聞かれる内容は「どんな医師になりたいか」「医療分野の問題に関心があるか」の2点に集約できる
・マンガやドラマなどで理想の医師像や医療の現代的課題について知ることも有効
・面接でもPREP法を意識しながら簡潔に話すと良い
近畿大学医学部の二次試験は配点がなく、段階評価のみです。
また、入試説明会での担当者の発言でもあるとおり、一次試験重視であることは間違いありません。
一方で、いくら一次試験重視といっても、医療分野の話題に全く関心が無く、なりたい医師像も描けていないような受験生は「医師としての資質無し」と判断されてしまう可能性があります。
また、いくら心の内に医療に対する熱い想いがあったとしても、小論文や面接でうまく表現できなければ意味がありません。
二次試験対策にどれだけ時間をかけるかは受験生にとって悩ましい問題ではありますが、受験勉強に追われる中で、一度立ち止まって「なぜ医師になりたいのか」をじっくり考える機会として捉えると良いのではないでしょうか。
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