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【医学部小論文対策】頻出6テーマで“考える力”を伸ばすワーク教材

小論文の対策|考え方のワーク頻出6テーマ

この記事でわかること

  • 医学部小論文で問われる「考える力」とは何か
  • 頻出テーマ6選(生命倫理・AI・感染症など)と、その考え方のポイント
  • 考える習慣を「書く力」につなげる次のステップ

「医学部の小論文って、どう対策すればいいのかわからない…」
そんな声を、私たちは多くの受験生から聞いてきました。

確かに、小論文には正解があるわけではなく、知識を詰め込むだけでは太刀打ちできません。
でも、だからこそ必要なのが「問いを持ち、自分の頭で考える力」です。

この記事では、医学部小論文で頻出の6つのテーマを取り上げながら、自分の意見を持ち、深めていくためのヒントをワーク形式で紹介していきます。

「型」やテクニックの前に、まずは考える習慣を身につけたいという方におすすめの内容です。
ぜひ、自分の視点で一つひとつのテーマに向き合ってみてください。

執筆・監修】 医学部受験の専門家 妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

使い方ガイド|この教材をどう使えばよい?

本記事は、単なるテーマの羅列ではなく、「自分の頭で考える練習」をするためのワーク教材です。次の流れで活用してみてください。

  1. テーマと主張を読む
    まずは、医学部小論文で実際に出題されそうなテーマと、それに対する一つの主張を読みます。
  2. 主張に対して疑問を持つ
    「本当にそうだろうか?」「どんなケースなら反対意見がありそうか?」と問いかけてみましょう。
  3. 「考えるヒント」を読んで深掘りする
    賛成・反対それぞれの視点から、どんな立論ができるかを整理していきます。
  4. 自分の意見を短くまとめてみる
    150〜200字ほどで、自分なりの意見を文章にしてみると、実戦力がついていきます。

考え方を深めるワークの進め方|実際にやってみよう

ここからは、実際のテーマを題材に「一つの主張に対して、疑問を持ち、自分なりに考える」ワークを行っていきます。

すでに紹介した手順にそって、主張→疑問→考えるヒント→意見の順で整理しています。読み進めながら、自分ならどう考えるかをぜひメモしてみてください。

テーマ1|がん告知をすべきか

【主張】
がんであることを患者に正直に告げるべきだ。本人の自己決定を大切にすべきだから。

さて、この主張に対して、みなさんはどう感じたでしょうか。「そのとおりだ」と思う方もいれば、「なんだか違和感があるな」と感じる方もいるかもしれません。

小論文では、こうした直感を「なぜそう思ったのか?」と問い直し、言葉にしていくことが大切です。

例えば、以下のように思考を深掘りしていくと、考えや直感を整理しやすくなります。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • その通りだと思った → なぜそう思ったのか、自分に問いかけて言葉にしてみましょう。
  • 違和感があった → どこに違和感があったのか、できるだけ具体的に言語化してみましょう。

まだうまく言葉にできないと感じた方は、より具体的な場面を想像してみてください。

例えば、あなたの身近な人ががんだとわかったとき、どうすべきでしょうか。
まだ子どもだったら?認知症の傾向がある人だったら?
一概に「告知すべき」と言えるでしょうか?

ここまで考えてみると、「自分はこう思う」という意見の輪郭が、少しずつ見えてくるかもしれません。

考えるヒント:

  • インフォームド・コンセントってそもそも何だろう?
  • 「患者」と一口に言っても、様々な属性や境遇の人がいるのでは?
  • 患者さんの利益とは、究極のところ、何を指すんだろう?

このワークでは、必ずしも完璧な回答を目指す必要はありません。
大切なのは、「どの立場で、何を書くか」という視点を養うことです。

以下の欄に、あなたが今感じたこと・考えたことを自由に書いてみましょう。

うまく書けるかどうかにこだわりすぎず、「今あなたが感じたこと・考えたこと」をまずは自由に書いてみることが小論文の練習の第一歩になります。

テーマ2|臓器移植はどこまで許されるか

テーマ1では「がん告知」をめぐる自己決定について考えました。
今回は少し視点を変えて、「臓器移植」について考えてみましょう。

【主張】
本人の同意があるなら、たとえ脳死の段階でも臓器を提供してよい。

この主張について、あなたはどう感じましたか?
「その通りだ」と思う方もいれば、「少し引っかかる」と感じた方もいるかもしれません。

それでは早速、テーマ1と同じように自分の直感を言葉にしていきましょう。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • 「同意があればOK」だと思った → どんなケースを想定していますか?
  • 違和感を覚えた → どの部分に引っかかりましたか?

もう少し考えを深めるために、具体的な状況を想像してみましょう。

たとえば、幼いお子さまを持つお母さんが、誰にも告げずにドナーカードに「臓器提供可」と署名していたとします。
不慮の事故で脳死と判定され、ご家族がそのカードの存在を知ったとき――
あなたが家族の立場だったら、どう感じますか?
「本人の意思だから」と受け入れられるでしょうか? それとも…

こうした場面を想像することで、自分の立場や考えの輪郭が、少しずつはっきりしてくるかもしれません。

考えるヒント:

  • 「脳死は人の死」だと考える人と、そうでない人がいます。あなたはどう考えますか?
  • 臓器提供に対する文化的・宗教的な考え方も関係してくるでしょうか?
  • 本人の意思と、家族の気持ちがぶつかるとき、どう考えるべきでしょう?

あなたなら、どんな立場で、どんな考えを持ちますか?
テーマ1と同様に、今感じていることを、素直に書いてみましょう。

テーマ3|出生前診断を受けるべきか

これまでのテーマでは、「がん告知」や「臓器移植」を通じて、自己決定とその影響について考えてきました。
次はまた少し視点を変えて、「生まれる前のいのち」に関する決断について考えてみましょう。

【主張】
重い病気や障害が予測できるなら、出生前診断を受けるべきだ。親が準備をするためにも必要な情報だと思う。

この意見を読んで、あなたはどんな風に感じましたか?
「正しい判断に必要な情報だ」と思う方もいれば、「命を選別するようで抵抗がある」と感じる方もいるかもしれません。

それでは、テーマ1・2と同じように、まずは自分の直感を見つめ、言葉にしてみましょう。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • 「受けるべき」と思った → どんな状況や理由からそう感じましたか?
  • モヤモヤした → どこに引っかかりを感じたか、できるだけ具体的に言葉にしてみましょう。

さらに考えを深めるために、次のような場面を想像してみてください。

あるご夫婦が、待望の赤ちゃんを授かりました。
母親は40歳。「高齢出産だから、念のために検査を受けておきたい」と考えています。
また、知人が障害児を育てており、その苦労も知っていることから「もし何か分かるなら、準備しておきたい」という気持ちもあります。

一方、父親は「検査結果で悩むくらいなら、知らないほうがいい」と話します。
「今回は何も問題がないかもしれないし、仮に見つかったとしても産むなら、意味があるのか?」と、迷いを口にします。

あなたが医療者の立場だったら、このご夫婦にどんな声かけができるでしょうか?
どんな価値観が交差し、どんな選択が求められているのでしょうか。

考えるヒント:

  • 情報があることで救われる人もいれば、かえって悩む人もいるのでは?
  • 「知る権利」と「知らないでいる権利」は、どちらが大切?
  • いのちの価値を「条件付き」で見る考え方になっていないか?

ここでも大切なのは、「正解」を出すことではなく、自分の立場から考えを整理してみることです。

以下の欄に、あなたの今の考えや感じたことを書いてみましょう。

テーマ4|安楽死・尊厳死は認められるか

テーマ3までは、医療における「選択」や「伝えること」に焦点を当ててきました。
次はもう一歩踏み込んで、「生き方・死に方の選択」について考えてみましょう。

【主張】
苦しみが大きく、本人の明確な意思があるなら、安楽死や尊厳死を認めてもよい。

この主張に対して、どのように感じましたか?
「本人の自由だから当然」と思う人もいれば、「何があっても命を諦めることは許されない」と感じる人もいるかもしれません。

これまでと同じように、自分の直感をまず言葉にしてみましょう。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • 「認めていい」と思った → どんな条件がそろえばよいと思いますか?
  • ためらいを感じた → それは制度への不安?人間関係?価値観?

さらに考えを深めるために、具体的な場面を想像してみましょう。

例えば、末期がんで痛みが強く、治療法もないと診断された患者さんが、「もう十分生きた」と言って安楽死を望んでいるとします。
長年連れ添った配偶者は「本当にそれがあなたの望みなら」と言いながらも、どこか迷いがある様子です。
もしあなたが医療者や家族の立場だったら、どう向き合うでしょうか?

簡単に答えが出せる問題ではありませんが、「なぜ自分はそう感じたのか」を意識して書き出してみることで、思考が深まっていきます。

考えるヒント:

  • 延命治療と尊厳死、どう線引きするべきでしょうか?
  • 医師が「死」に関わることへの責任は?
  • 本人の意思と、家族や社会の受け止め方にずれがあったら?

「あなたならどう考えるか」を、ここで一度じっくり言葉にしてみましょう。

以下の欄に、あなたの考えを書いてみてください。

テーマ5|ちょっとした体の不調をAIに相談するのはアリ?ナシ?

スマホで体調をチェックできるアプリや、症状を入力すると病気の可能性を教えてくれるAIなど、最近は「まずAIに相談してみる」という選択肢も増えています。
今回はそんな「日常の医療とAI」の関係について考えてみましょう。

【主張】
忙しい中で少し体調が悪いとき、すぐに病院に行くのではなく、まずAIに相談するのは合理的であり、むしろ推奨されるべきだ。

この主張を聞いて、あなたはどう思いましたか?
「確かに便利かも」と感じる一方で、「それで本当に大丈夫なの?」という不安もあるかもしれません。

まずは、あなた自身の直感に注目してみましょう。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • 「AIでも十分そう」と思った → どういう症状や場面を想像しましたか?
  • 「それはちょっと危ない」と思った → どんなリスクが頭に浮かびましたか?

さらに理解を深めるために、具体的な状況を想像してみましょう。

たとえば、高校生のあなたが、喉の痛みと微熱でAIに相談したところ、「風邪でしょう」という回答だったとします。
市販薬を飲んでしっかり寝たら、翌朝にはすっかり良くなっていました。

お医者さんに余計な手間を取らせることもなく、医師の働き方改革にも貢献。
AIに頼るのもアリかも?と思える出来事かもしれません。

ですが、もし市販薬を飲んでも改善しなかったら…?
その間に症状が急に悪化してしまったら…?
あるいは、AIを盲信して、必要な医療を受けない人が増えてしまったら…?

「AIで済むなら、その方が良い」という考えと、「やはり人に診てもらいたい」という気持ちの間で、意見が分かれるテーマです。

考えるヒント:

  • AIと人間の判断、それぞれにどんな強み・弱みがあると思いますか?
  • もしAIの判断で悪化した場合、責任は誰にあるのでしょうか?
  • 本当に大事なときに、医師にかかることはできる環境でしょうか?

「正解」を出す必要はありません。あなた自身の立場や気持ちを言葉にしてみましょう。

以下の欄に、あなたの意見を書いてみてください。

テーマ6|感染症対策と人権のバランスはどう考える?

受験生の皆さんの中には、感染症の流行により、修学旅行の中止や文化祭の縮小など、学校行事が制限されたり、思い出を十分に作れなかったという経験をした方もいらっしゃるかもしれません。
そうした経験から、「社会全体を守る」という大義と「個人の自由や楽しみ」との間で葛藤を覚えたことがあるのではないでしょうか。

今回は、「感染症対策と個人の人権のバランス」について考えてみましょう。

【主張】
感染症の拡大を防ぐためには、たとえ個人の行動を制限してでも、強い対策を講じるべきである。

この主張を見て、あなたはどう感じましたか?
「その通りだ」と思う一方で、「でも…」と引っかかる部分もあるかもしれません。

それでは、まずは自分の直感を整理してみましょう。

【直感を深掘りしてみましょう】

  • 「制限もやむを得ない」と思った → どのような制限までなら許容できますか?
  • 「やりすぎでは?」と感じた → どの部分に懸念を抱きましたか?

少し視点を変えて、具体的な場面を想像してみましょう。

例えば、ある国で感染症が流行し、政府は「感染症の流行を抑えるために、学校を休校します」と宣言しました。
この決定に対して、一部の保護者は「子どもの学習権を奪うのか」と強く反発します。
一方、基礎疾患のある子どもを持つ保護者は「うちの子を守るためにも当然の措置」と主張します。

もしあなたが政府の判断に関わる立場だったら、どのように対応しますか?
「誰を守るべきか」「どこまでが許容範囲か」――そんな問いが浮かんできます。

考えるヒント:

  • 個人の自由や権利と、社会全体の安全のバランスはどう取るべき?
  • 感染症のリスクは誰にとってより深刻でしょうか?
  • 制限が差別や排除につながる可能性はありませんか?

これまでのテーマと同様に、自分の考えを「どの立場で書くか」を意識しながら整理してみましょう。

以下の欄に、あなたの考えを書いてみてください。

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まとめ:小論文で問われている「考える力」とは

ここまで6つのテーマに取り組んできた受験生の皆さん、お疲れさまでした。
「どう考えればいいか分からなかったけれど、少しずつ慣れてきた」という実感がある方も多いのではないでしょうか。

実はこの一連のワークこそが、医学部小論文で本当に問われている力に直結しています。
知識量や正解を披露するのではなく、「自分の視点で問いを立て、考え、他者と共有できる形で表現する」こと。これが求められているのです。

特に、テーマ5「AI活用」やテーマ6「感染症対策と人権」では、身近な出来事を題材に「もし自分だったら?」と考えた方も多いのではないでしょうか。
その“自分ごと”として考える姿勢が、小論文力を伸ばす大きな一歩になります。

そしてこの力は、将来、医療現場であらゆる人と向き合うために不可欠な「対話力」にもつながっています。
小論文と面接が地続きである理由も、少し見えてきたのではないでしょうか。

小論文の「型」よりも、「問いを持つ姿勢」から

「小論文って、何をどんな順番で書けばいいの?」という不安は多くの受験生が抱えています。
でも実は、「どう書くか」よりも「問いを持って考える姿勢」こそが大切です。

今回のワークでは、「正しい答え」を求めるのではなく、考えを深め、他者と分かち合う形にするプロセスを体験してもらいました。

この姿勢を持ち続けることで、どんなテーマにも向き合える力がついていきます。
そしてその力は、将来、医師として患者さんやご家族と丁寧に向き合い、対話しながら意思決定する場面でもきっと活きてきます。

さらに、ここで得た「考える力」を「書く力」へとつなげていくことが、これからのステップになります。
自分なりの言葉で書けるようになったら、それを誰かに見てもらい、伝わる言葉へとブラッシュアップしていくことが次のステップです。
こうした小さな実践の積み重ねが、小論文の実力を確かなものにしていきます。

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MEDICAL DIGでは、医学部受験生向けの小論文個別指導・添削サポートを実施しています。
今回のワークで得た「問いを持つ力」を実際の答案に活かしていきたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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