この記事では、大阪大学医学部の入試における英語の対策について詳しく解説していきます。
大阪大学医学部に現役合格した医学部生たちの経験を踏まえた内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
はじめに|大阪大学医学部の英語の入試の特徴
大阪大学医学部は、東京大学・京都大学に次ぐ難関医学部です。
英語に関しては、近年は易化傾向にあると言われているものの、決して簡単とは言えず、加えてライバルたちも非常に高い実力を持っているため、しっかりと対策していく必要があります。
大阪大学の英語の特徴としては、
- 長文問題の本文が長い
- 英文の構造が複雑
- 自由英作文という独特の設問
などがあります。
語彙・構文・読解とも非常に難易度は高くなっていますが、難易度が高いからこそ、基礎から着実に積み上げていくことが大切です。
難しい問題をたくさん解くだけでなく、「分からない問題があったら、必ず教科書レベルに戻って復習する」など、丁寧に学習を進める習慣を身に付けていきましょう。
また、大問3の「自由英作文」や大問4の「和文英訳問題」では、英語の知識だけでなく国語力や論理的思考力なども求められます。
こうした国語力や論理的思考力を伸ばしていくためには、単純な演習を繰り返すだけではなく、「言葉の本質や論理展開について考える」といったトレーニングも行っていかなければなりません。
一方で、国語力や論理的思考力は、確かな英語力があってこそ初めて解答としてアウトプットできるものです。
「確かな英語力」と「国語力・論理的思考力」は大阪大学の英語を突破するために無くてはならない“両輪”ですので、受験勉強を進める上ではぜひ意識していただければと思います。
大阪大学医学部入試の概要
この章では、大阪大学医学部の入試制度の概要について解説していきます。
入試制度について既に十分ご存知の方は、「3.【阪大医学部】英語入試の傾向と対策」までお進みください。
○ 募集定員
・(一般入試・前期日程) 90人 ※後期日程は平成29年度入試より募集停止
・(学校推薦型選抜) 5名程度
○ 実施教科・科目(一般入試)
◾️大学入学共通テスト
・国語
・地歴公民 …世界史B、日本史B、地理B、倫理・政治経済から1科目
・理科 …物理、化学、生物から2科目
・数学 …数I・数Aと、{数II・数B、簿記、情報のうち1つ}の2科目
・外国語 …英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語から1科目
◾️二次試験
・数学 …数I、数II、数III、数A、数B
・理科 …物理、化学、生物から2科目
・外国語 …英語
・面接
○配点
※1…地歴公民は第1解答科目の成績を利用
※2…英語(リーディングを100点、リスニング100点)を選択した場合、リーディングを150点満点、リスニングを50点満点に換算
※3…面接において医師や医学研究者になる適正に欠けると判断された場合は、筆記試験の結果に関わらず不合格となる
○第1段階選抜
大学入学共通テストの成績(※)の総点が900点満点中630点以上の者のうちから、募集人員の約3倍までの者が第1段階選抜合格者となる。
※大学入学共通テストの素点を成績として利用。ただし英語については、上記※2のとおりに換算して利用する。
○試験時間割
・1日目(土曜日) …数学(90分)、英語(90分)、理科(210分)
・2日目(日曜日) …面接
○試験会場
大阪大学 吹田キャンパス 医学部医学科講義棟(吹田市山田丘2-2)
【阪大医学部】英語入試の傾向と対策
大阪大学の英語の入試問題は、以下の構成となっています。
- 大問1 …英文和訳問題(2問)
- 大問2 …長文問題(類義語選択、空所補充、記述説明、内容一致選択など)
- 大問3 …自由英作文(1問)
- 大問4 …和文英訳問題(2問)
それぞれの傾向と対策について、順に解説していきます。
【阪大医学部】英語入試の傾向と対策①英文和訳問題
大阪大学の英語の大問1は、和文英訳問題が2問出題されます。
主な出題意図は、
(イ) 文意を適切に理解できているか
の2点であり、それぞれについて意識的に対策していくことがポイントとなります。
まず、「(ア)文の構造を正しく把握できているか」ですが、大阪大学の英語・大問1では非常に複雑な構造をしている英文の和訳が求められます。
ただし、複雑とは言っても、高校英語の範囲を超えた文法や、基本的な文法規則に則らないような文章が出題されるわけではありません。
つまり、一見すると複雑そうに見える文章でも、一つ一つの要素は「不定詞」「分詞」「関係代名詞」「接続節」といった基本的な文法から成り立っており、必ずSVOCの原則に則った文構造になっています。
ですので、大阪大学の英語で出題されるような難易度の高い英文を和訳する際には、まずは文章をSVOCに分解(=品詞分解)し、特に複雑になりがちな修飾/被修飾の関係(何がどこに掛かっているか)を正確に捉えられるようになる必要があります。
英文の構造を正確に把握する力を付けるためには、
- 最初にSVOCをマークする
- 節ごとに<>で括る
- 修飾/被修飾関係を矢印(←)で示す
といった基本的な品詞分解の練習を積み重ねることが最も効果的です。
一見すると地味ですが、こうした基礎的な演習は続けていけば必ず力が付くため、遠回りであるように見えて、実は最も確実で効果の高い演習方法となります。
さらに、こうした品詞分解の演習は、問題になっている下線部だけでなく、あらゆる長文問題の本文全てを題材とすることができます。
そのため、問題集をたくさん買い揃えなくても、手持ちの教材だけでほぼ無限に演習を重ねることができます。
品詞分解の徹底練習は、阪大を始め、英文和訳問題が出題される大学入試の対策としてはかなりオススメの勉強法となりますので、ぜひ取り組んでいただければと思います。
「(イ)文意を適切に理解できているか」については、“日本語には無い概念”や“その文章の中で定義されている新しい概念”を上手く日本語で表せるか?といった出題意図であり、阪大以上の難易度の大学の英語ではよく見られるタイプの出題となっています。
例えば、2022年度の大阪大学の入試では、「identify」という日本語では非常に表しづらい概念や、「guilty look」のように文章全体のテーマを理解しないと上手く訳出できない語句が解答のポイントとなっていました。
これらの語句については、辞書的な意味をそのまま解答するのではなく、文章全体の意味を把握し、前後の流れを汲み取って上手く日本語に落とし込んでいく必要があります。
また、「(ア)文の構造を正しく把握できているか」をクリアできたとしても、英語の文構造をそのまま直訳体で日本語にすると不自然になり、筆者が言いたいことが上手く伝わらない場合があります。
こうした場合は、文章全体の流れや意味(文脈や文意)を上手く読み取った上で、適切な日本語で表せるようになる必要があります。
この「文意を適切に読み取る→日本語で上手く表現する」という能力は、単に英単語や文法を覚えるだけでは伸ばすことができません。
この能力を伸ばすためには、日本語の作文力や語彙力といった国語的な力も付けていく必要があります。
作文力を伸ばしていくためには、直訳体で訳した後に「この日本語で通じるか?読みやすいか?」という視点で常に見直すようにすることが大切です。
直訳体の日本語を読んでみると、多くの場合、
② 修飾語と被修飾語の位置が遠すぎる
③ 語彙が適切ではない
といった点が読みづらさの原因になっています。
直訳した日本語が分かりづらい場合は、①~③のいずれが原因になっているのかを分析し、日本語を修正していくと良いでしょう。
まず「①修飾語が長すぎる」に関しては、大胆に文章を切っていくことがポイントになります。
例えば、英文を直訳したときに、
となったような場合は、明らかに主語の修飾が長すぎます。
ですので、主語を修飾している部分を短く切って、
とすることで、文意を変えることなく読みやすくすることができます。
このように修飾語が長くなってしまうのは、多くの場合、関係代名詞節が非常に長いケースです。
関係代名詞節が長いケースにおいては、先行詞(関係代名詞節が修飾している名詞)を主語とした一文を作り、そこで一旦区切ってしまうという方法がオススメです。
【直訳体】
飼っている猫をとても愛しているカレンが、先ほど、その猫に餌をやった。
↓
【意訳】
カレンは飼っている猫をとても愛している。彼女は先ほど、その猫に餌をやった。
この「関係代名詞節を一文として独立させる」という方法は、多くの場面で使えるテクニックですので、ぜひ覚えていただければと思います。
次に、「②修飾語と被修飾語の位置が遠すぎる」については、例えば、
という文章の場合、冒頭の「いつも」が何を修飾しているのか分かりづらく、読みにくい文章になってしまっています。
「いつも」は「気を付けている」という動詞を修飾していますので、「気を付けている」のできるだけ近くに置き、
とすることで意味が通りやすい文章にすることができます。
実は、日本語の特徴として、“修飾語(特に副詞)の位置の自由度が非常に高い”というものがあります。
一方で、英語は日本語に比べて語の順番が厳密に決まっているため、そのまま直訳してしまうと、日本語にしたときに修飾語と被修飾語が非常に遠い位置になってしまうことがあります。
副詞と用言が離れてしまうのは日本語の作文でもよくあることですが、「副詞と用言を近づける」ということを意識するだけで文章は格段に読みやすくなりますので、ぜひ実践していただければと思います。
最後に、「③語彙が適切ではない」に関しては、例えば、workという単語は“仕事(をする)、働く、機能する”という意味ですが、
という英文を
と直訳するのは非常に不自然です。
この場合は、“イースト菌が働く”というのはどういうことかを考え、
などのように意訳すると良いでしょう。
ちなみに、workを辞書で調べると「発酵する」という意味が後ろの方に載っているのですが、辞書に載っているからといって「発酵する」という意味まで覚える必要はありません。
workの本質的な意味が「働く、機能する」であるということさえ分かっていれば「発酵する」と訳することはできますので、単語の意味をたくさん覚えるよりも、前後の流れと単語のニュアンスをつかむことを大切にしましょう。
なお、大阪大学の英語は難しいからといって、むやみに難しい単語を覚える必要はありません。
難関大学とはいえ国立大学ですので、基本的には国の定める学習指導要領に則った内容が出題されます。
語彙数としては、難関大学レベルとされている2000語を覚えさえすれば、それ以上に難しいレベルの専門用語などを覚える必要はありません。
もし本文の中で見たことがない語句が出てきた場合は、必ず前後の文章にヒントが隠されています。
「知らない単語だ!」と慌てるのではなく、焦らず落ち着いて文章全体の意味を読み取っていきましょう。
大阪大学の英語のポイントは、語彙力よりも「文章の構造を把握する力」「文意を正しく理解する力」「日本語で表現する力」であり、大学側も出題意図として明確に示していますので、ぜひ意識的に取り組んでいただければと思います。
【阪大医学部】英語入試の傾向と対策②長文読解
大阪大学医学部の英語の大問2は長文読解となっています。
単純な下線部和訳はほとんど出題されず、類義語選択・空所補充・記述説明・内容一致選択といった形式の問題が出題されます。
類義語選択については、文章の流れを踏まえて言い換え可能な単語を選ぶ必要があり、単にその単語の意味を知っているだけでは正答するのが難しい問題となっています。
最低限の語彙力は必要ではあるものの、単純な語彙力というよりは、文章全体の流れを把握する読解力が試される問題となっています。
「類義語選択」という設問の形式上、語彙力を付ければ解けそうだと思ってしまいがちですが、大阪大学が求めているのは単純な語彙力以上に“読解力”であることを忘れず、常に文章全体を見る意識を持っていただければと思います。
空所補充も同様に、文脈をしっかりと捉えて適切な語句を補充することが設問の意図であり、語彙力だけを問う問題ではありません。
空欄の直前・直後だけでなく文章全体に目を通し、文脈を踏まえて解答するようにしましょう。
記述説明については、「○○の内容を明らかにした上で説明しなさい。」といった条件付きで出題されたり、「何文字以内で」といった字数制限が設けられたりする場合があります。
また、本文中に下線が引かれていることはほぼ無く、自分で該当箇所を見つけなければならなりません。
加えて、問いに対して自分の言葉で適切に答えていく必要があるため、英語力だけでなく国語的な記述力も必要な問題となっています。
内容一致選択は比較的オーソドックスな出題形式であり、まさに「文章が読めているかどうか」が問われます。
この問題を間違えてしまうと、大阪大学医学部合格への道のりはかなり厳しいものとなりますので、必ず正解できるようになることを目指して日々の勉強に取り組んでいただければと思います。
総じて、大問2の長文読解問題は、平均的な長文読解のような「語彙力さえあれば解ける」といった問題がほぼ無く、大問1に引き続き確かな読解力と国語的な記述力が求められます。
また、大問1では丁寧な日本語訳(=精読)が求められるのに対し、大問2では英文を読むスピード、すなわち「この辺りが問われている」という当たりを付けながら読むという“速読”の力も求められています。
ですので、大阪大学の英語においては、精読と速読の両方の力が必要であることを意識しながら学習を進めていきましょう。
【阪大医学部】英語入試の傾向と対策③自由英作文
大阪大学の英語において最も特徴的なのが、大問3の自由英作文です。
自由英作文は、東大や京大でも出題されていない問題形式で、大阪大学独自のものとなっています。
指定語数は80語程度である場合が多く、英文一文当たりの平均的な語数は10~20字程度であることから、およそ5~7文で解答を書き上げるイメージを持つと良いでしょう。
大阪大学の自由英作文において評価されるポイントは、
② 自らの考えを論理的に示すことができているか
の2点です。
このうち、「①構文や語彙は正しいか」については、ほかの問題と同様、基礎からしっかりと英語力を積み重ねていくことが対策につながります。
構文については、「3-1.【阪大医学部】英語入試の傾向と対策①英文和訳問題」で解説したように、教科書や参考書、問題集の英文を使って品詞分解の練習を徹底することで、読むときだけでなく書くときにも構文を意識できるようになります。
語彙力については、単に英単語をたくさん覚えるだけでなく、対応する英語が思い浮かばないときに上手く言い換えるというスキルも必要になります。
上手く言い換える力を伸ばすためには、和文英訳の問題をたくさん解き、知っている英単語の中で表現する練習を重ねると良いでしょう。
例えば、和文英訳で直接対応する英単語が思いつかないときには、英単語の語彙を増やそうとするのではなく、「知っている英単語で表現するにはどうすれば良いか?」と考えて、知っている単語で解答しきるという練習を重ねることが大切です。
この「知っている英単語で表現する」という方法は、自由英作文の練習にもなりますので、ぜひ意識して取り組んでいただければと思います。
「②自らの考えを論理的に示すことができているか」については、大阪大学の自由英作文においては社会的な事象や課題に対して「あなたはどう考えるか?」という設問がほとんどであることから、日頃から社会の情勢に目を向けるだけでなく、「自分はどう考えるだろう?」と常に自分の意見を持つようにすることが対策につながります。
また、文章全体が論理的な構成となっているかどうかも非常に重要です。
80字程度とそれほど長い文章ではありませんので、
- 冒頭で主張を述べる(私は~だと考える)
- 続いてその理由を述べる(なぜなら、~だからだ)
- 具体例や反論などで意見を補強する(例えば~/~という意見もあるかもしれないが、しかし…だ)
- もう一度主張を述べる(だから、私は~と考える)
といったように、「主張→理由→具体例(補強)→結論」といったシンプルな構成とすれば問題ありません。
自由英作文をする際には、いきなり書き始めるのではなく、この「主張→理由→具体例(補強)→結論」の枠組みを参考にして、簡単な骨組みをメモしてから書き始めると良いでしょう。
また、「英語を読んだり書いたりするときには、ディスコースマーカーを意識しなさい」ということも言われますが、入試問題の英作文においてはそれほど難しく考えなくても大丈夫です。
ディスコースマーカーとは、要は接続詞のことであり、読解の際にはディスコースマーカーを意識することで全体の論の流れをつかみやすくなるというメリットがあります。
一方、80字程度の英作文の場合は、それほど複雑な論の流れを作る必要はありません。
そのため、「for example(例えば)」「but(しかし)」「so / therefore(よって、だから)」などのシンプルな接続詞を正しく使うことができていればOKです。
難しいディスコースマーカーを使おうとして、文法を間違ったり、論理展開がおかしくなったりしてしまっては意味がありませんので、自由英作文においては「シンプルに、正しく」を意識して回答するようにしましょう。
【阪大医学部】英語入試の傾向と対策④和文英訳
大阪大学の和文英訳は、そのまま翻訳機に文章を入れても意味を成さないような、抽象度が高く、日本語の文法的にもトリッキーな出題が多くなっています。
京大の和文英訳も難易度が高いですが、年度によっては京大よりも阪大の方が難しいと感じる受験生もいるほどです。
解き方としては、日本語をいきなり英語にしようとするのではなく、「この文章は、結局何が言いたいのか?」とまずは日本語を解釈することから始めます。自分なりに日本語を解釈してから、改めて英語で作文し直すというイメージを持つと良いでしょう。
受験生の中には、「元の日本語がそもそも何を言っているか分からない」と感じる人もいるかもしれません。
その場合は、日本語を解釈する力を伸ばしていく必要があります。
元の日本語がそもそも何を言っているか分からないという人は、
- 比喩表現の理解が苦手
- 言葉を額面通りに受け取ってしまい、行間を読むことができない
といった苦手を持っていて、抽象度の高い文章に触れた経験も少ないというケースが多くなっています。
言語による情報処理が生まれつき苦手な性質を持っていたり、国語や文章に対する苦手意識があったりするために、これまでの人生の中で純文学やエッセイ作品などにほとんど触れてこなかった(避けてきた)というようなケースです。
こうした「国語そのものが苦手」なタイプの方が後天的に国語を好きになることは難しいため、テクニックで対策していく必要があります。
例えば、大阪大学の和文英訳が複雑で難しく感じるのは、
② 日本語の構成が複雑
といったことが要因になっているため、それぞれについて対策をしていくと良いでしょう。
まず「①語彙の抽象度が高い」に対しては、抽象度が高いと感じた語彙について、平易な言葉で自分なりに説明することを徹底します。
例えば、2023年に出題された問題では『共通性』という単語がキーワードになっていました。
『共通性』と言われると何となくわかるような気もしてしまいますが、実は抽象度が高く、この言葉をきちんと解釈していないまま読み進めてしまうと、「結局何が言いたいのか?」をつかむことができません。
そこで、『共通性』という言葉を小学生でも分かるように自分の言葉で説明していきます。
『共通性』
↓ 小学生にも分かるように説明する
『同じであること。例えば、りんごとみかんは、どちらも“果物である”ことが同じ。なので、りんごとみかんは“果物である”という共通性を持っている』
ここまで頭の中で言い換えてみると、本文にある「私たちはみな,かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である事実」という部分が、筆者の言うところの「共通性」であり、この文章において重要なポイントとなっていることが分かってきます。
この「小学生にも分かるように自分の言葉で説明する」という方法は、すぐに完璧にできるようになるのは難しいかもしれませんが、意識して続けていくことで必ず読解力が身に付いていきますので、ぜひ取り組んでいただければと思います。
次に「②日本語の構成が複雑」に関しては、句点で延々と文章が続いていたり、文章の真ん中に修飾節が入り込んでいたりと、とにかく「一文が長い」ことで読みづらくなっていることが多くなっています。
そのため、英文を読むときに節ごとに<>で括るのと同様に、日本語も<>で括ってしまうか、もしくは句点や接続詞で区切りながら読んでいくという方法がオススメです。
例えば、2023年度の出題では、下線部の二文目が、
(海部陽介.2022.『人間らしさとは何か 生きる意味をさぐる人類学講義』河出書房新社より一部改変)
という非常に長い文になっています。
この長い文をそのまま解釈したり、ましてや英語に訳したりすることはほぼ不可能ですので、「どこで切ることができるか?」という視点でよく観察してみましょう。
まずは、シンプルに句点で区切りながら見ていきます。
②私たちはみな,
③かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である事実に目を向け,
④だから「私たちは潜在的にわかり合える」という信念を持つべきでしょう。
次に、接続詞や接続詞に準じる単語(論を展開させるようなワードや言い回し)に注目します。
この文章においては、
②私たちはみな,
③かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である事実に目を向け,
④だから「私たちは潜在的にわかり合える」という信念を持つべきでしょう。
のように、「ではなく(対比)」「だから(因果)」「という(例示)」がこれに該当します。
この接続詞やそれに準ずる単語の箇所に注目し、それぞれの関係性に注目していきます。
まず、①の「ではなく」については、次の②③とは逆の内容(対比)であることが分かります。
また、④の「だから」は③の内容を受けていると考えられますが、ここで④の内容を注意して見ていく必要があります。
というのも、④の中には「という」という接続詞的な単語を挟んで、動詞が2つ含まれています。
④に含まれている動詞は、「わかり合える」と「持つべきでしょう」の2つです。
そこで、この「だから」が④の「わかり合える」と「持つべきでしょう」のいずれを繋いでいるのかを確かめていくために、実際に文章を作って検証してみましょう。
B) 兄弟姉妹という事実に目を向ける。だから、信念を持つべきだ
このように並べてみると、(A)の方が全体の文意を表していることが分かります。
つまり、③の「だから」は③の内容と④の「わかり合える」を原因/結果の関係で繋いでいることがわかります。
それでは最後に、④の「という」を分析していきます。
さて、この「という」はどこからどこまでを示しているのでしょうか?
一見すると直前の「」の中を指しているように思えますが、上述のように「だから」によって④は③と強く結びついていることが分かりました。
なので、この「という」は直前の「」の中だけでなく、「かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である、だから、『私たちは潜在的にわかり合える』」という、「」の前の内容も含めて例示していると考えられます。
ここまでの内容をまとめると、
②私たちはみな,
③かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である事実に目を向け,
④<私たちはみな、かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である。だから「私たちは潜在的にわかり合える」>という信念を持つべきでしょう。
となります。
ここまでくると、元の和文の意味はほとんど理解できていると思いますので、あとは①の末尾のニュアンスや③④のつながりの部分などを整理して、
②「私たちはみな,
③かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹である」という事実に目を向け、
④そして、かつて同じ歴史を共有してきた兄弟姉妹であるからこそ、「私たちは潜在的にわかり合える」という信念を持つべきでしょう。
などとすれば、かなり英語に変換しやすい日本語になったのではないでしょうか。
大阪大学の和文英訳を解くためには、以上のようなプロセスで元の日本語を分解し、再構成していく必要があります(このプロセスを、「和文和訳」と呼ぶこともあります)。
国語が得意な受験生は、こうした分解・再構成のプロセスを感覚的にできてしまうのですが、そうでない場合は地道に、
② 接続詞を探す
③ 文章の切れ目とつながりを整理する
④ 英語にしやすい日本語に直す
といった手順を繰り返し練習していきましょう。
時間は掛かるかもしれませんが、国語的な読解力の向上にもつながり、英語だけでなく国語や小論文など、文系科目全体の学力向上にもつながりますので、ぜひじっくりと取り組んでいただきたいと思います。
【阪大医学部】英語の勉強法
「3.【阪大医学部】英語入試の傾向と対策」では、大問ごとに解説を行ってきましたが、この章では英語全体の勉強の進め方やオススメの参考書・問題集について解説していきます。
大阪大学医学部の英語を攻略するためのポイントは、
② 国語力を付けること
③ 語彙よりも構文を重視すること
の3つになりますので、以下で順に解説していきます。
【阪大医学部】英語の攻略法①基礎から地道に積み上げること
英語は「積み上げ型」の教科です。
ですので、単語・熟語(語彙力)を土台として、その上に文法や読解などの力を順番に積み上げていく必要があり、単語や熟語、文法が身に付いていないままに長文読解の問題を解くことはできません。
したがって、阪大医学部のような難関校に挑戦する場合であっても、まずはコツコツと単語を覚え、教科書に沿って文法を覚えていくことが大切です。
また、大阪大学医学部は難関ではありますが、あくまで国立大学ですので、文部科学省の定める学習指導要領を大きく外れた知識や単語、文法を使わないと解けない問題は出題されません。
ですので、これから受験勉強を始める方たちは、当面の目標として、
- 教科書の知識をしっかりと定着させる
- 学校の定期テストで少なくとも9割以上は点数を取る
といったことを着実に進めていただければと思います。
図 1:英語の問題分野と類型
【阪大医学部】英語の攻略法②国語力を付けること
大阪大学の英語の問題を解くためには、英語力だけではなく「国語力」も必要です。
大問1の英文和訳と大問3の自由英作文では「国語的な表現力」が、大問2の長文読解と大問4の和文英訳では「国語的な読解力」がそれぞれ必要になります。
大阪大学医学部の二次試験には国語が無いため、ついつい国語の勉強を疎かにしてしまうかもしれませんが、日々の授業にはきちんと集中し、読解力や表現力を高める意識を持っていただければと思います。
特に、大問3の自由英作文は、社会情勢や社会課題について自分の意見を問われる問題となっています。
評論文で取り上げられている題材に関心を持ったり、新聞を読んだりして見識を広めておくことが非常に重要ですので、自分なりに興味を持ち、「○○についてどう思う?」と聞かれたときに自分の意見を答えられるようにしておきましょう。
【阪大医学部】英語の攻略法③語彙よりも構文を重視すること
「4-1.【阪大医学部】英語の攻略法①基礎から地道に積み上げること」で述べた通り、英語の全ての土台は「単語・熟語」であり、語彙を増やしていくことは非常に重要です。
一方で、大阪大学の英語は難しいからといって、難しい単語をたくさん覚えれば点数が取れるというわけでは決してありません。
冷静に考えてみれば分かる通り、英単語は世の中に無限に存在するため、全ての英単語を覚えきることはできません。
また、大阪大学の英語において専門用語のような難しい単語が出てくる場合は、必ず文章の中にヒントがあります。
加えて、大阪大学の英語の難しさは、語彙自体が難しいということではなく、「その文章の中で定義されている新しい概念」や「日本語には無い概念」をどのように解釈し表現すればよいか?というようなケースであり、その単語を知っているか/知っていないかという単純なものではありません。
こうした独特の概念や日本語で表しづらい表現を上手く読み取って回答に落とし込むためには、
- 文章の構造を正しく理解する
- 日本語で適切に表現する
といった力が必要です。
これらの力を伸ばすためには、「3-1.【阪大医学部】英語入試の傾向と対策①英文和訳問題」で紹介したような品詞分解の練習の徹底、そして「4-2.【阪大医学部】英語の攻略法②国語力を付けること」でお伝えしたような国語力の向上が必要となります。
阪大英語を攻略するために、「これさえやれば大丈夫」というような近道はありません。
これまで述べてきたことを地道にコツコツと続けていただき、確かな英語力(そして国語力)をしっかりと時間を掛けて伸ばしていただきたいと思います。
【阪大医学部】英語の攻略法④オススメの参考書・問題集・単語帳
大阪大学の英語の対策のために、特別な参考書や問題集を買い揃える必要はありません。
これまで述べてきたように、大阪大学の英語の対策において大切なのは、
- 文の構造理解=品詞分解の徹底練習
- 国語的な読解力と表現力
ですので、基本的には学校で使っている教科書・参考書・問題集・単語帳にしっかりと取り組めば大丈夫です。
ただし、単に載っている問題を解くだけではなく、「本文を全て品詞分解する」「例文をすべて覚える」といったように、その教材を使ってできる勉強を全てやり込むようにしましょう。
また、学校で使っている参考書や問題集が基礎~標準レベルである場合は、応用レベルの内容もインプットしておく必要があります。
学校で使っている教材が標準レベルまでである方に向けて、以下でオススメの教材を紹介していきます。
【阪大医学部】英語の攻略法④オススメの単語帳
大阪大学の英語は、語彙力よりも構文理解や読解力が重要ですが、決して単語や熟語の暗記を疎かにして良いわけではありません。
国立大学を受験する場合の目安となる2000語については、「覚えているのが当然」という気持ちで挑みましょう。
学校で使っている単語帳が2000語未満のものである場合は、「ターゲット1900(旺文社)」または「システム英単語(駿台文庫)」に取り組むことをオススメします。
いずれも王道のシリーズですが、受験生たちに長く使われているだけあり、確かな情報量と使いやすさになっていますので、自分に合う方を選ぶと良いでしょう。
・ 英単語ターゲット1900 6訂版 | 旺文社 (obunsha.co.jp)
…「一語一義」主義で、入試で出題されやすい中心的な意味が大きく掲載されています。
いくつもの意味を覚えるのではなく、「中心的な意味を覚えて文脈の中でほかの意味も推測・判断できるようにする」という方向性が大阪大学の英語の出題意図とマッチしているためオススメです。
・ システム英単語〈5訂版〉 | 駿台文庫 (sundaibunko.jp)
…語法問題に出やすい単語や複数の訳語を覚える必要がある単語(=Aパターン)と、語法が比較的単純で派生語も少ないためフレーズの形で覚えれば対応できる単語(=Bパターン)に分けて掲載されているのが特徴です。
【阪大医学部】英語の攻略法④オススメの参考書
参考書は数を揃える必要はなく、一冊をしっかりと学んで定着させることが重要です。
学校で使っている参考書が基礎~標準レベルまでしか対応しておらず、大阪大学を受験するには内容が不十分な場合や、どうしても見辛かったりして肌に合わない場合のみ、個人で追加で購入して取り組むと良いでしょう。
・ Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition] | 桐原書店 (kirihara.co.jp)
…左ページを問題、右ページを解説とする見開き2ページの構成で非常に見やすくなっています。
英文法・語法問題だけでなく、英作文問題や英文読解問題も掲載されており、大学入試で合格点を取るための前提となる知識が1冊にまとめられています。
・ スクランブル英文法・語法 4th Edition | 旺文社 (obunsha.co.jp)
…上述の「Next Stage」と同様、見開き2ページの構成となっており、文法や語法だけでなく、語彙、イディオム、会話表現、発音・アクセントを含む6大分野を網羅している点も同じです。
実際に手に取ってみて、どちらかしっくりくる方を選ぶと良いでしょう。
・ 大学受験スーパーゼミ 徹底攻略 英文解釈の技術 100[CD 付新装改訂版] | 桐原書店 (kirihara.co.jp)
…複雑な構造の英文でも必ず読めるようになる100のテクニックがわかりやすく解説されています。
大阪大学の英語の一番のポイントである「構文理解」の力を伸ばすのに適した一冊となっています。
【阪大医学部】英語の攻略法④オススメの問題集
大阪大学の英語において何よりも重要なのは「構文理解」です。
どんな問題集であっても、「問題文以外の本文まで品詞分解する」という練習を徹底することで、本番の試験の対策とすることが可能です。
したがって、学校で使っている問題集を活用して対策を進めることは十分に可能ですが、本文自体の難易度が低く、大阪大学の対策としては不十分な場合は、より高いレベルの問題集を自分で購入して取り組む必要があります。
大阪大学医学部を目指す場合における、適切な難易度の問題集の例を以下でご紹介します。
・ やっておきたい英語長文1000 | 河合出版 (kawai-publishing.jp)
…900~1600語程度のハイレベルな超長文10題がまとめられています。Outlineと要約が付いているため、論理の展開を把握する練習にもなります。
このシリーズは「やっておきたい英語長文700」「やっておきたい英語長文500 | 河合出版 (kawai-publishing.jp)」と語数ごとに作られているので、徐々に語数を増やしてステップアップしていくのもオススメです。
・ 英語長文問題精講 新装版 | 旺文社 (obunsha.co.jp)
…オーソドックスな長文問題の問題集であり、品詞分解の練習量を重ねたいときにオススメです。
別冊は解答だけでなく、注意事項や語句の説明までしっかり読み込みましょう。
・ 『改訂新版 ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』(竹岡 広信)|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)
…英作文の演習にオススメの一冊です。
英作文に必要な技法が100文に凝縮されていて、大阪大学の英語で必要となる「論理的な文章を書く力」を伸ばすことができます。日本人が無理なく書ける表現が厳選されている点も好評です。
・ 大阪大学(理系)|「赤本」の教学社 大学過去問題集 (akahon.net)
…過去問は、英語の学習が一通り仕上がってから取り組むことをオススメします。
というのも、大問3の自由英作文や大問4の和文英訳は、基礎的な英語力と読解力・表現力が身に付いた上で取り組まないと、そもそも歯が立たたないばかりか、解答解説の理解もままならないはずです。
ほかの問題集でしっかりと力を蓄えた上で、最後に力試しとしてチャレンジするようにしましょう。
【阪大医学部】入試対策・出題傾向・勉強法のまとめ
この記事では、大阪大学医学部の英語の入試対策や出題傾向、勉強法について詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 大阪大学医学部の英語で最も大切なのは「構文理解」
- 大阪大学医学部の英語では、「国語的な読解力・表現力」も必要
- 語彙力も必要ではある(2000語目安)が、高校生レベルをはるかに越えた単語については前後から意味を類推して対応すること
- 普段から品詞分解を徹底することが、構文理解力の向上につながる
- 国語の評論文のテーマや社会情勢にも関心を持ち、社会課題について自分なりの意見を持つようにすることが、大問3の自由英作文の攻略のポイント
- 確かな英語力と国語力を地道に積み上げることが、地味なようで最も確実な攻略法
大阪大学医学部の英語を攻略する際に最も大切なのは、基礎からしっかりと着実に力を積み上げていくことです。
自由英作文や和文英訳は大阪大学ならではの出題であり、特別な対策が必要なのではないかと思ってしまいますが、いずれもきちんと構文力や読解力を身に付けていれば対応できるものであり、特別な対策をする必要はありません。
ただし、基礎から丁寧に学習を積み重ねていく際には、
- コツコツと継続する力
- 分からないことを曖昧にせず、その都度立ち止まって考える力
- 間違えたときにその原因を分析し、基礎に立ち返って復習する力
- 自分の苦手を客観的に分析し、苦手に応じた演習をする力
といった、学力に先立つ基本的な姿勢や行動力が必要になります。
私たち医学部専門個別指導MEDICAL DIGでは、こうした物事に向き合う姿勢や行動力のことを「アトリビュート」と呼んでいます。
「アトリビュート」は学力を伸ばしていくための土台です。
一人一人が持っているアトリビュートの強みと弱みを分析し、それぞれに応じたアプローチを行うことで、自ら学びに向かう力や物事を深く考える力を伸ばしていくことができます。
「何をどのように勉強すれば良いのかわからない」
「今の勉強方法が自分に合っているかどうか不安」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度MEDICAL DIGにお問い合わせください。
生徒さまのアトリビュートを丁寧に無料で分析し、伸び悩みの原因を明らかにするとともに、一人一人に合った学習計画をご提案いたします。
また、MEDICAL DIGでは、授業や面談を全てオンラインで承っています。
全国各地からご利用いただけるほか、現在通っている塾や予備校と並行して利用したい方、お近くに医学部専門塾が無くお困りの方など様々なニーズにお応えしますので、お気軽にご相談ください。
志望校への合格を目指し、一緒に頑張りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。