大阪大学医学部は東大・京大医学部に次ぐ難関医学部です。
合格するためには、高校1年生のときから着実に基礎を積み上げ対策していくことが大切です。
大阪大学医学部を志望している方の中には、理科の選択科目を物理・化学・生物のどれにしようか悩んでいる方も多いのではないしょうか?
大学によっては特定の科目が受かりやすいなどの傾向がありますが、大阪大学医学部においてはいずれの科目も年度ごとの難易度のバラつきが大きく、絶対的なオススメが無いのが現状です。
また、医学部を志望する方(もしくは理系志望の方全体と言っても良いかもしれません)には物理選択者が比較的多く、続いて化学、生物の順で人数が多い傾向にあります。
既に生物を選んだ方の中には、「周りに生物選択者がいない」「生物は受験で不利なのだろうか?」といった不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
そこでこの記事では、大阪大学医学部の生物の傾向と対策や、理科の選択科目の選び方のポイントについて詳しく解説していきます。
現役の阪大医学部生の経験を踏まえた内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
【阪大医学部】物理・化学・生物のどれを選べば良い?
大阪大学医学部の入試では、共通テスト・二次試験の両方で物理・化学・生物のうちから2科目の受験が必要です。
まず押さえておきたいのが、どの科目が簡単か/難しいかということは言えないということです。平均点は年度によってバラつきがあり、生物だけがずっと簡単だったり、物理だけがずっと難しかったりといったことはありません。
共通テストに関しては、点数調整(※)されるほど平均点の差が開くこともあり、できれば簡単な科目を選びたいと思うかもしれませんが、当然ながらその年の難易度を予想することはできないため、どんな難易度の問題が出ても目標点が取れるよう実力を磨くことが大切です。
ただし、受験者が1万人以上の科目のみが対象のため、地学のように受験者が少ない科目は点数調整の対象外となる。
二次試験に関しては、大学によっては科目ごとの難易度に傾向が見られる場合があります。
例えば、化学の難易度が例年比較的易しいため、化学はマストで受験して、個人の性質に応じて物理か生物を選択するという戦略が有効な大学もあります。
ですが、大阪大学医学部はこのパターンには当てはまりません。
大阪大学医学部の二次試験では生物の難易度が高いと言われていますが、年度によっては生物の難易度が極端に下がることもあります。
また、物理と化学の難易度も年度によってバラつきが大きく、科目選択だけで入試を有利に進めることはできないと考えましょう。
理科の科目選択において大切なのは、難易度に関する情報に振り回されず、自分の性質に合った科目を選ぶことです。
また、点数が伸び悩んでいるからといって安易に科目を変えないことも大切です。
「やっぱり化学にしておけば良かった」「生物を選んだから合格できなかったのかな」と悩んでいるよりも、選択した科目の勉強をコツコツと進める方がよほど合格に近づくことができます。
ただ、人によってはどうしても物理の公式の概念が理解できなかったり、化学の計算が苦手であったりする場合があります。
科目を選ぶ前に自分の性質と科目の特徴の相性を見極めて選びたいところですが、明らかに相性の悪い科目を選択してしまった場合はできるだけ早い段階で科目を変更するようにしましょう。
以下では、物理・化学・生物の特徴とメリット・デメリットを解説していきますので、科目選択の参考としていただければと思います。
また、既に生物を選択しており具体的な勉強方法を知りたいという方は、「「2.【阪大医学部】生物の勉強方法|合格までの3ステップとオススメの参考書紹介」までお進みください。
物理の特徴とメリット・デメリット
物理の特徴は、数学的センスが必要であることと、暗記量が圧倒的に少ないこと、そして記述量が少ないことです。
そのため、公式を使いこなすセンスのある人は短時間で点数を伸ばすことができますが、センスの無い人はいくら時間をかけても点数が伸び悩んでしまいます。
物理で全く点数が取れないという人は文系の方に多いですが、理系の方でもゼロではありません。運動方程式や三角関数について直感的に理解が難しいと感じる場合は、どちらかといえば物理は苦手なタイプと言えるでしょう。
また、物理と数学はどちらも数理的なセンスを必要とするため、数学が得意な人は物理も得意である場合が多くなっています。
ただ、数学の問題ではどの公式や定理を使えば良いのかが比較的分かりやすい形で示されており、どの公式を使うか選択するプロセスよりも、具体的に数式を解くプロセスが重視されます。
一方、物理では問題文を読んでどの公式を使えばよいのかを自分で考えて式を立てていく必要があります。式を立てた後の計算はそれほど煩雑ではないため、物理においては「立式」がポイントになっていると言えます。
・数学 →数式を解くプロセスが中心
・物理 →数式を立てるプロセス(=立式)が中心
ただし、難関大学の数学の場合は、物理と同様に「自分で式を立てる(解法を見つける)」ことが求められます。
大阪大学医学部の数学では自分で解法を見つけなければならないような問題はそれほど多く出題されませんが、東大・京大レベルになると物理と数学の難しさの性質は非常に似通ってきます。
暗記量については、化学や生物に比べると1/5程度と非常に少なくなっています。暗記に費やす時間が短縮できるため、暗記が苦手な人にはオススメの科目となります。
物理は記述量が少ないことも特徴の一つです。
計算が複雑になりがちな化学や論述が必要な生物と比べて、物理では解法を思いつきさえすればスマートに問題を解くことができます。解答を枠内に収めたり、時間内に文章を整えたりする技術を磨く必要が無いため、効率的に勉強を進めることができます。
また、記述量が多い科目では単純に時間が足りないという問題も生じやすいですが、記述量の少ない物理ではそうした懸念もありません。
ただし、問題の意味が理解できなかったり誘導に乗れなかったりすると、全く点が取れない可能性もあるのが物理の怖いところでもあります。
各問題や公式の本質を捉えたり、たくさんの問題に当たり経験値を積むことで、どんなパターンの問題が来ても対応できるように実力を付けていきましょう。
- 公式や定理の本質を理解し、問題に当てはめて解いていける数理的センスが必須
- 暗記量は圧倒的に少ないため、暗記が苦手な人にもオススメ
- 求められる記述量が少なく、解答を整えるスキルを磨く必要が無い
化学の特徴とメリット・デメリット
化学については、暗記と計算量がとにかく多いことが特徴となっています。
これだけを聞くとデメリットのように思えますが、コツコツと積み上げれば確実に点が取れるという点で、数理的センスが必要な物理や、理系科目ながら読解力が必要な生物に比べると安定して点が取りやすいという大きなメリットがあります。
化学は「理論化学」「無機化学」「有機化学」の3つの分野に分かれますが、無機化学と有機化学だけでも生物全体と同程度の暗記量が必要です。
無機化学・有機化学と比べると理論化学は計算がメインにはなりますが、暗記すべき内容も一定あるため、暗記が極端に苦手な人にとっては厳しいものとなるでしょう。
molや分子量、有効数字といった特有の概念を最初にしっかりと理解しておくことが大きなポイントとなります。
最初は慣れないため取っつきづらく感じるかもしれませんが、これらの概念は化学の基礎基本であり、慣れてしまえばどうということはありません。
また、化学においては計算量も膨大です。
小数点以下3桁同士の掛け算や割り算が頻繁に出てきますし、一つの問題の中で何回も約分や通分をしなければならない場合があります。丁寧かつスピーディに計算する必要があるため、計算ミスが多い人は注意が必要です。
ただし、化学の問題のパターンはそれほど多くなく、共通テストレベルであれば安定して8~9割以上を得点することが可能です。
また、大阪大学医学部の二次試験の問題レベルは標準~難レベルで、1問程度は難~超難レベルの問題が出題されるという問題構成になっています。
合格ラインとしては、やや難レベルの問題までは解ききり、さらに難~超難レベルの問題も5割程度得点できれば医学部合格を狙えるでしょう。
問題の見極めと時間配分が重要になりますが、たくさんの問題に当たることで、パターンで解ける問題かどうかや必要な計算量が分かるようになってきますので、とにかく時間を掛けてコツコツと積み上げていくことが大切です。
- 暗記量と計算量が膨大
- 問題のパターンが限られており、共通テストレベルであれば点数はかなり安定する
- 暗記や計算にコツコツ取り組める人にオススメ
生物の特徴とメリット・デメリット
生物の大きな特徴は、計算がほとんど必要無いことです。
また、物理に比べれば暗記量は多いものの化学よりは少なく、問題によっては全く知識が無くても解ける場合があります。
ただし、生物においては問題文を正確に読み取り、論理的に考える力が求められます。
問題文で示された前提条件を整理して、それに則って実験結果を予想したり考察したりする問題がほとんどです。
文系の方に生物選択の人が多いのは、読解力や論理的思考力で勝負できる面が大きいためであり、逆に文章を正しく読み取るのが苦手な人にはオススメできません。
また、大阪大学医学部の二次試験においては、問題文がかなり長文であるだけでなく、50~85字程度の短文記述による解答も多くなっています。問題に対して簡潔に過不足無く答える力が必要であり、文章によるアウトプット力も試されます。
生物のもう一つの特徴は、各単元がほぼ独立していることです。
物理や化学はそれぞれの単元が密接に関係しており、それぞれ最初に勉強する「力学」「理論化学」が基礎的な内容となっています。そのため、物理における力学や化学における理論化学を疎かにしてしまうと、それ以降に学ぶ内容についていけないという事態に陥ってしまいます。
一方で、生物は「遺伝」「体内環境」「生態系」などの各単元が独立しており、極端に言えばどの単元から勉強しても問題ありません。
共通テストにおいてはどの単元からも満遍なく出題されますが、大阪大学医学部の二次試験では分子生物と神経が頻出で、次いで代謝・体内環境・遺伝となっています。
頻出の単元に絞って勉強を進めたり、あるいは苦手な単元に集中して勉強できたりする点はメリットと言えます。
ですが、分野が多岐にわたり関連性が薄いため、暗記しづらいというデメリットもあります。
総じて、生物は長い問題文に物怖じせず正確に読み取れる人にオススメの科目となっています。
やや文系向きの科目とも言えますが、医学部を目指す方にとっては大学入学後にも役立つ知識や思考力を身に着けることができますので、選択肢の一つとして検討していただきたいと思います。
- 長い問題文を正確に読み取り、簡潔な文章でアウトプットする力が必要
- 暗記量は中程度で、計算はあまり必要ではない
- 各単元が独立しており、物理や化学のような積み上げが必要無
- 医学部を目指す場合は、入学後も役立つ知識や思考力を身に着けられる
【阪大医学部】生物の勉強方法|合格までの3ステップとオススメの参考書紹介
この章では、生物選択で大阪大学医学部への合格を目指すための道筋を3つのステップに分けて解説していきます。
それぞれのステップにおけるオススメの参考書や問題集も併せて紹介していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
【阪大医学部】生物の勉強方法ステップ①教科書の履修を終える
難関大学医学部を目指す場合でも、まずは基礎を固めることが大切です。
そのためには、遅くとも高校3年生の夏までには教科書の全範囲の履修を終えるようにしましょう。
高校によっては授業の進度が遅く、高3夏時点で全範囲の履修が終わらないことがありますが、その場合は自習により全範囲の履修を終わらせるようにしましょう。
高3になってから「授業だけでは夏までに全範囲が終わらない」と気付いて慌てて対応するのではなく、高2時点で先生に授業の進度を確認し、終わらない部分については日頃の授業と並行しながら少しずつ予習を進めるようにしましょう。
慌てて詰め込んだ知識は定着しづらく、結果的として勉強の効率が落ちてしまいます。受験勉強の基本は「地道かつ計画的に」ですので、早め早めの対策を意識することが大切です。
予習する際の具体的な方法ですが、基本的には「教科書を読む→基礎~標準レベルの問題集を解く」といったオーソドックスな形で構いません。
教科書を読んだだけでは内容の理解が難しい場合は、スタディサプリなどの動画教材を活用するのも良いでしょう。このステップにおいてはわざわざ自分で問題集を購入せずとも、学校で使っている問題集を使う形で構いません。
また、当然ですが日々の授業を疎かにしないことが一番大切です。
授業にしっかりと集中して、授業で習ったことは授業中に覚えきることを目標に学習を進めましょう。
塾や家でやれば良いやという考えは授業時間を丸ごと捨ててしまっているようなものであり、とても非効率です。
日々の授業にしっかりと集中し、定期テストでも9割以上得点することが、大阪大学医学部合格への第一歩となります。
【阪大医学部】生物の勉強方法ステップ②知識を使いこなせるようになる(アウトプット経験を積む)
教科書の知識を単純に頭に入れただけでは、入試の問題を解くことはできません。
知識という武器を手に入れたら、今度はその使い方を学んでいく必要があります。
確かに知識は覚えたはずなのに、問題を目の前にするとその知識を引き出すことができなかったという経験がある方も多いと思いますが、これは知識を引き出す、すなわちアウトプットする経験が不足していることが原因となっています。
アウトプットの力を付けていくためには、今の自分のレベルに合った問題から徐々にステップアップする形でたくさん問題演習していくことが大切です。ステップ①で紹介した問題集で基礎レベルの問題が一通り解けるようになったら、標準~発展レベルの問題に挑戦していきましょう。
その際、分からないところがあれば教科書に戻って基本的な知識から復習することも大切です。
忘れてしまっていたことは何度も復習することで定着していきますので、手間を惜しまず繰り返し復習しましょう。
このステップの目標は、偏差値65程度の大学の入試問題で8~9割、あるいは共通テストで安定して8~9割取れることです。
教科書の履修進度にもよりますが、早ければ夏休みが終わるまで、遅くとも10月頃までにはこのレベルに到達していることを目指しましょう。
【阪大医学部】生物の勉強方法ステップ③超難問を解くための実力をつける
言わずもがなですが、大阪大学の生物は難問ぞろいです。
ステップ②で演習してきたような定石問題がそのまま出題されることはほぼ無く、難解な長文問題に初見で立ち向かっていかなければなりません。
しかしながら、どんなに難しい問題であっても、基礎的な知識とアウトプットの経験の積み上げがあってこそ解けるものであり、まずは物怖じせず自信を持って挑むことが大切です。
「なんだか難しそう」「自分には解けなさそう」と後ろ向きな気持ちでいると、不安や心配に脳のリソースが割かれて集中力や思考力も落ちてしまいます。
特に生物に関しては、見たことも聞いたことも無い物質名が出てきたりして焦ってしまいがちですが、問題文の中に必ず説明とヒントがありますので、落ち着いて対処していきましょう。
このステップにおける具体的な勉強方法は、高難易度の問題集と過去問の演習となります。
過去問については、10年前のものから順に最新のものへと進めていくのがオススメです。当然ながら年度の新しい問題の方が最近の出題傾向に近いため、試験本番の日に近付くにつれ、より本番に近い形で演習することができます。
また、過去問を解く際には必ず時間を測りながら解くようにしましょう。大阪大学医学部の理科は150分2教科ですので、もう一つの科目と併せて一気に解くことをおすすめします。
75分で1科目だけ解くのも絶対にダメというわけではありませんが、150分通しで問題を解く場合の集中力の持たせ方や、一方の科目が難しかったり簡単だったりした場合の時間配分の調整なども練習しておきたいところです。
過去問を解く際には1問目から順番に解くのではなく、問題全体をざっと見渡し、解けそうな問題から解いていくようにしましょう。
また、3分以上手が止まってしまった場合は別の問題に移るなどのテクニックも磨いていくようにしましょう。
さらに、見直しやケアレスミスを減らすなど最終のツメの部分まで意識し、1回1回が本番だと思って1点でも多く取れるように繰り返し演習していきましょう。
大阪大学医学部に生物選択で合格する方法のまとめ
この記事では、大阪大学医学部に生物選択で合格する方法について、詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 大阪大学医学部の入試においては、共通テスト・二次試験とも「物理」「化学」「生物」の3科目から2科目を選択し受験する必要がある
- どの科目も年度によって難易度にバラつきがあるため、いずれかの科目を選ぶと受験で有利になるということは無い
- 点数の伸び悩みを科目選択のせいにせず、地道に勉強を進めることが大切
- 科目選択の際には、自分の性質と合った科目を選ぶようにし、基本的には途中で変えないようにする
- 受験勉強を進める際には、①教科書の定着②アウトプットの訓練③本番レベルまで精度を高めるという3ステップを意識する
- 理科の過去問を解く際には、本番同様に150分2科目を通して解くのがオススメ
物理・化学・生物の3科目の中で、生物はややマイナーで文系の人が選ぶイメージが強いかもしれません。
また、大阪大学の生物の問題の一部は医学部の教授が作っているとの噂もあり、難易度が高いのではと敬遠している方もいらっしゃると思います。
ですが、理系の方の中にも生物と相性が良い方もたくさんいらっしゃいますし、医学部を目指すのであれば、大学入学後も役立つ知識や思考力を身に着けられる生物は選択する価値のある科目です。
科目選択においては、難易度だけを見るのではなく、自分の性質や関心に合った科目を選ぶようにしましょう。
性格や物事の捉え方が一人一人異なるように、最適な学習スタイルも人によって異なります。
医学部専門個別MEDICAL DIGでは、アトリビュート(※)の観点から個人の性質を分析し、志望校選びや科目選択の段階から丁寧にサポートします。
一人一人が持っている物事への向き合い方や行動原理のこと。
MEDICAL DIGでは、アトリビュートを「Grit」「Motivation」「解像度」などの10項目から分析し、その人にあった学習スタイルを提案しています。
指導は大阪大学医学部・京都大学医学部を始めとする現役医学部生たちが行います。
自身の経験を踏まえながら、メンタル面からも受験生の皆さまをしっかりと支えてまいりますので、安心してサポートをお任せください。
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志望校への合格を目指し、一緒に頑張りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。