関西の難関私立医学部の一つである近畿大学医学部。
関西の私立総合大学の中で医学部を設置しているのは近畿大学のみであり、キャンパスの広さや他学部との交流、研究分野の広さなど、総合大学らしい特徴を持っています。
近畿大学医学部は、第一志望として受験する人だけでなく、関西の難関国立大学医学部である京都大学・大阪大学・神戸大学のすべり止めとして受験する人や、前期試験で第一志望に不合格になってしまった人が後期で受験するなど、受験生たちの実力の幅が非常に大きいのが特徴です。
さらに、同じく関西の難関私立医学部である関西医科大学とは、受験生の数や倍率に一定の相関関係が見られ、近畿大学の倍率が高かった翌年には関西医科大学に受験生が流れるなどの傾向があります。
近畿大学医学部の入試問題は、難易度自体は高くありませんが、合格最低点は総じて高く、安定して得点できる実力を身に着ける必要があります。
また、年度や出願方式によって倍率や必要科目も変わってきますので、しっかりと情報を収集し、より有利に受験を進めることがポイントとなります。
医学部受験は情報戦でもあります。
この記事では、近畿大学医学部の入試に関する基本情報から倍率の分析や予想まで詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
医学部受験の専門家
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
【2023年度】近畿大学医学部の入試方式と定員
最新の情報については、近畿大学医学部の公式ホームページでご確認ください。(入試情報・学費|近畿大学入試情報サイト (kindai.jp))
近畿大学医学部の入試制度と各定員数は以下のとおりです。
- 公募推薦 …25名
- 一般前期 …55名 ※A日程のみで、B日程は無し
- 一般後期 …5名
- 共通テスト利用方式 …前期5名、中期3名、後期2名
- 共通テスト併用方式 …募集無し
- 地域枠 …17名(大阪府(3人)、奈良県(2人)、和歌山県(2人)、静岡県(10人))
最も定員が多いのは一般前期の55人です。
以前は65人でしたが、地域枠の導入に伴い、65人から55人に減少しました。
今後も概ねこの定員数が維持されると予想されますが、地域枠については各地域(都道府県)や連携先病院との調整の状況次第であるため、年度によって定員が変わる可能性があります。
以下では、それぞれの入試方式の倍率や定員の変遷を詳しく解説していきますので、志望校や入試方式を検討する際の参考としていただければと思います。
なお、公募推薦(定員25名)についてはこちらの記事(■近大医学部の推薦(一般公募)の対策は?難易度・合格最低点・過去問を徹底解説)で詳しく解説していますので、ご関心のある方は併せてご覧ください。
【近畿大学医学部】一般前期入試の定員と倍率
近畿大学医学部の一般入試・前期(2015~2023)の定員・志願者数・合格者数・倍率は以下のとおりです。
定員(募集人数)
近畿大学医学部の一般入試(前期)の定員は、2015年から2016年にかけて5名減少し(70名→65名)、さらに2019年から2020年にかけて10名減少(65名→55名)と、少しずつですが減少傾向にあります。
これは、総合型選抜を始めとする近年の入試制度の多様化のほか、2020年度からの地域枠の導入などの影響を受けたものと考えられます。
特に地域枠(※)の導入の影響は大きいと考えられ、今後も動向を注視していく必要があります。
というのも、地域枠は専願方式であり、出願して合格すれば必ず入学することになります。
すべり止めで受験する人が多い近畿大学にとって、入学者の数が確実に予想できる地域枠の導入には、一定のメリットがあると考えられるでしょう。
もちろん、近畿大学は受験生の間口を広げることが得意な大学ですので、専願方式で卒業後も勤務地を指定されるなどの制約がある地域枠を積極的に広げていくかどうかは予想が難しいところですが、地域枠と一般入試・前期の定員数には明らかな相関関係がありますので、社会全体の動向も踏まえながらしっかりと傾向を分析していきましょう。
へき地における医師不足や診療科の偏りを解消するために厚生労働省が実施している制度で、卒業後は一定期間(多くは9年間)指定された医療機関で勤務することを条件に、返還不要の奨学金を受け取ることができます。
出願要件として、出身地や居住地の制限が設けられている場合もありますが、近畿大学の地域枠に出身地・居住地の制限はありません。
競争率や合格最低点は、一般入試に比較すると低くなる傾向にあります。
志願者数
近畿大学医学部の志願者数は年度ごとにバラつきが大きいのが特徴です。
過去9年間の平均志願者数は1,540人ですが、最多で1,902人(2016年度)、最少で1,236人(2020年度)と700人近くの差が生じています。
志願者数の差は、日本の景気の状況に比例していると考えれば良いでしょう。
近畿大学医学部の一般試験・前期の合格者数は、他の入試方式や他大学の前期試験と比べると決して多くはありません。
したがって、景気が良い時期は家計にも余裕があるため受験者数が増えるものの、景気の悪い時期は受験を控える家庭が増え、受験者が減少する傾向にあります。
ちなみに、近畿大学医学部の一般入試・前期の検定料は57,000円であり、他学部の32,000円より高い設定となっています。
さらに、入学金と初年度学費の納入期日は国公立大学の合格発表日よりも前に設定されています(2023年度は3月2日が納入期限)。
入学金と学費を合わせると、入学時納入金は約390万円となります。
実際に近畿大学医学部に進学しない場合は入学金の100万円以外は返還されますが、それでも金銭的な負担がかなり大きくなることは知っておきましょう。
合格者数
景気の悪い年は志願者数が少ないため受験を有利に進められるのでは?と思ってしまいますが、志願者数が少ないからと言って必ずしも倍率が低くなるとは限りません。
というのも、近畿大学医学部の一般入試は併願方式ですので、定員=合格者数とはならず、その年の大学の采配によって合格者数はかなり違ってきます。(最多:189人(2015年)、最少:96人(2021年))
この合格者数に注目するのが非常に重要で、例えば2015年度は定員70人に対し合格者189人と、2.7倍の合格者を出していますが、直近の2023年度では定員55人に対し合格者数は108名と、1.9倍の合格者しか出していません。
つまり、以前は合格者の中で実際に近畿大学医学部に入学するのは3人に1人程度でしたが、近年では合格者の2人に1人は近畿大学に入学するようになっています。
このことから、すべり止めで近畿大学を受ける受験生の割合が減り、本命として受験する人の割合が増えているということがわかります。
上位校を受験する人たちと競争しなくて良いからラッキーと感じる人もいるかもしれませんが、逆に言うと、同じような実力の受験生たちが団子状態で競争している状況とも言えます。
1点1点の重みがより大きくなるため、「皆が解ける問題でいかに失点しないか」という視点で基礎からしっかりと固めていくことが大切です。
倍率
近畿大学医学部の一般入試・前期の倍率は、志願者数に一定の波があることと、合格者数がやや減少傾向にあることから、非常に予測しづらい状況にあります。
ただ、地域枠の導入により一般入試・前期の募集人数と合格者数は今後も緩やかに減少していくことが予想されるため、倍率もそれに伴い上がっていくというのが大方の予想となるでしょう。
また、倍率が上昇傾向にあるにも関わらず、合格最低点は横ばいとなっています。
このことからも、すべり止めの需要よりも近畿大学医学部を第一志望とする受験生同士の競争となっていることが読み取れます。
すべり止めの上位勢が少なくなったからと言って油断せず、基礎を着実に身に着けられるよう、コツコツと学習を進めていきましょう。
他大学との比較
関西には、近畿大学医学部のほか、関西医科大学・兵庫医科大学・大阪医科薬科大学の4つの私立大学医学部が存在しています。
このうち近畿大学医学部は関西医科大学に次いで倍率が高くなっており、全国的には私立大学医学部の中で中間程度の倍率となっています。
また、偏差値は関西医科大学や大阪医科薬科大学と比較するとやや低く、1ランク下の偏差値帯に属します。
- 関西医科大学 16.0倍(11位)、偏差値67.5(9位)
- 近畿大学医学部 14.4倍(12位)、偏差値65.0(20位)
- 兵庫医科大学 12.2倍(14位)、偏差値62.5(30位)
- 大阪医科薬科大学 9.7倍(20位)、偏差値67.5(9位)
関西医科大学と近畿大学は倍率と偏差値が近いことから、例えば、関西医科大学の倍率が上がった翌年には、反動で近畿大学に受験生が流れるなど、志願者数や倍率に一定の相関関係が見られます。
また、2校を併願して受験している人も多いと考えられます。
近畿大学医学部を受験する際は、関西医科大学など他の私立大学や国立大学医学部の志願者の動向についてもチェックしておくと良いでしょう。
【近畿大学医学部】地域枠の定員と倍率
近畿大学医学部の地域枠は、2020年度から導入された新しい入試方式です。
そのため、募集定員や選抜方法もまだ安定しておらず、今後大きく方針が変わる可能性もあります。
例えば、2021年度は地域枠の一部が一般選抜ではなく学校推薦型選抜として実施されました。
そのため、一般選抜での定員枠が5名と少なくなっていますが、翌年の2022年度には再び全ての地域枠が一般選抜で募集されるようになり、さらに募集人数も17名まで増やされました。
近畿大学医学部の地域枠入試は、現在、調整段階にあると言えます。
専願制で勤務地の制限がある一方、返還不要の奨学金が受けられるなどのメリットも大きいため、学費の負担を最小限にしたい方や地域医療に貢献したい方は積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
【近畿大学医学部】一般後期入試の定員と倍率
近畿大学医学部の一般入試・後期(2015~2023)の定員・志願者数・合格者数・倍率は以下のとおりです。
定員(募集人数)
近畿大学医学部の一般入試・後期の定員は5人です。
ほかの入試方式の定員は頻繁に変更されていますが、一般入試・後期においては過去9年間にわたり5人のまま変更されていないため、今後も定員数に変化はないと考えて問題無いでしょう。
志願者数
近畿大学医学部の一般入試・後期の志願者数は、最少で544人(2022年度)、最多で1,321人(2015年)となっており、定員対比で見ると100倍以上の志願者が集まっています。
これは、後期試験を実施している私立大学医学部がそもそも少なく全国で9校しかないため、関西以外からも志願者が集まっていることが要因と考えられます。
特に2020年度はセンター試験の最終年であり、「今年で何としても大学進学を決めたい」という受験生が集まったと見られます。
後期試験は、要するに「前期日程で第一志望に合格できなかった人が受けるもの」ですので、その年の受験生が安定志向か挑戦志向かによって志願者数が変わります。
近年は景気の低迷などの要因によって安定志向が続いているため、後期試験の志願者数は2020年度を除き比較的少なくなっています。
とはいえ狭き門であることには変わりが無いため、後期入試で合格するのはかなり難しいものと考えましょう。
合格者数
合格者数は5~14名となっており、多い年では募集定員5名に対して2.8倍の合格者を出しています。
後期試験の合格発表日は3月17日と、近畿大学の入試方式の中では最も遅く、他の入試方式での合格者・入学者の状況を踏まえて最終的な人数調整を行っていると考えられます。
その年の状況に大きく左右されるため、合格者数を予想するのは非常に困難です。
一般入試・後期はあくまで救済措置と考え、「後期があるから大丈夫」と楽観視することは避けましょう。
倍率
志願者数は一貫して多いものの、合格者数に幅があることから倍率は年度によって差があります。
ただし、一番低い2022年度でも41.8倍と平均して高い数値となっています。
一般入試・後期は選択肢の一つではありますが、合格を勝ち取るのはかなり困難です。
医学部受験は前期で勝負が決まると考え、志望校選びからしっかりと戦略を考えましょう。
また、後期試験に挑戦する場合は期待を大きく持ち過ぎず、合格に至らなかった場合はいかに次に繋げるかといった気持ちの切り替えを行うことも大切です。
他大学との比較
後期試験を実施している私立大学医学部は全国で9大学と非常に少ない中で、うち3大学が大阪に集中しています。
関西医科大学・近畿大学医学部・大阪医科薬科大学はいずれも所在地が大阪府で、後期試験を実施しています。
前期の倍率や偏差値はそれぞれ異なりますが、後期試験を実施している医学部は非常に少ないため、様々な学力層の受験生が関西圏以外からも集まります。
多くの受験生は、前年度の合格状況やその年の前期試験の出願状況を踏まえ、上述の3大学のいずれを選ぶか検討することになります。
ですが、実際の受かりやすさは蓋を開けてみなければ分かりませんので、後期試験であるからこそ自分が本当に行きたいと思える大学を選ぶことも大切です。
【近畿大学医学部】共通テスト利用方式(前期)の定員と倍率
近畿大学の医学部には、大学入学共通テスト(2019年度以前はセンター試験)を利用した入試方式があります。
前期・中期・後期の3つに分かれていて、それぞれ入試日程・募集定員・利用科目が異なります。
また、共通テスト利用方式であっても、医学部の場合は二次試験が課されるので注意しましょう。
2016年度には定員が6名から10名に増やされましたが、2020年度からは地域枠が設けられたことによって、10名から5名まで減少しました。
志願者数はやや減少傾向にありますが、合格者数は30人程度と多めであり、倍率は概ね15~20倍程度で推移していくと考えられます。
「早めに進学先を決めたい」という受験者の根強い安定志向と、「早めに学生を囲い込みたい」という大学側のニーズがマッチした結果、定員の6倍程度の合格者を出していると捉えることもできます。
共通テストに自信のある方は、近畿大学医学部の共通テスト利用方式(前期)をすべり止めとして活用するのも良いでしょう。
【近畿大学医学部】共通テスト利用方式(中期)の定員と倍率
共通テスト利用方式の中期・後期は、前期と異なり共通テストの結果を見てから出願するかどうかを決めることができます。
そのため、前期に比べるとレベルの高い受験生が集まりやすいものの、直近3年間の定員に対する合格者数は6~7倍と非常に多く、共通テストで高い得点が取れている受験生であれば十分合格を狙えるでしょう。
合格最低点が公表されていないためはっきりとは分かりませんが、京大・阪大医学部を第一志望としている受験生たちが集まっていると考えると、共通テストの得点としては9割程度が合格の目安になると考えられます。
【近畿大学医学部】共通テスト利用方式(後期)の定員と倍率
共通テスト利用方式(後期)は、一般入試・後期と同様に、最終的な人数調整弁の役割を持っており、他の入試方式の合格者や入学者の状況に左右されやすくなっています。
そのため、定員に対する合格者数も1.0~6.0倍と非常に幅が大きく、受かりやすさの予測がしづらいことが特徴となっています。
また、近畿大学医学部に確実に合格できる実力のある受験生は、ほとんどの場合、共通テスト利用方式(後期)以前の日程で合格となっています。
たまたま試験当日に実力を発揮できなかったなどの事情がある場合以外は、後期で合格を狙うのはかなり難しいものと考えましょう。
近畿大学医学部の一般入試・共通テスト利用方式の倍率のまとめ
この記事では、近畿大学医学部の一般入試や共通テスト利用方式など、入試方式ごとの定員や倍率について詳しく解説してきました。
改めてポイントをまとめると以下のとおりです。
- 近畿大学医学部の一般入試・前期の倍率は15倍程度で推移しており、私立大学医学部の中では中程度の倍率である。
- 地域枠入試は導入から間もないため、今後も制度や定員が変わる可能性がある。ほかの入試方式にも影響するため注視が必要。
- 京大・阪大医学部など上位校のすべり止めとしてのニーズは根強いものの、景気の低迷のためか受験者数はやや減少傾向にある。
- 合格最低点は10年前とほぼ同水準であり、安定志向から学力上位の受験生でも近大医学部を第一志望としたり、すべり止め受験でそのまま入学したりするケースも多いと考えられる。
近畿大学は全国で最も志願者数が多い大学として有名であることから、競争率も高く合格するのが難しそうと感じる方も多いかもしれません。
ですが、それぞれの入試方式の位置付けや合格者の状況などをしっかりと分析することで、自分に合った戦略を見つけ、受験を有利に進めることは十分可能です。
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